見た目は元気なのに、健康診断の血液検査で愛犬の肝臓の数値が高く出ると不安になりますよね。
飼い主さんは肝臓の役割を知り、原因を考えることが大切です。
この記事では、犬の肝臓の数値が高くなる原因や注意したい症状をお伝えします。
肝臓に良い食べ物もご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね!
1.肝臓ってどんな臓器?
まずは、肝臓が体内でどんなはたらきをしているか理解しておきましょう。
肝臓には、大きく4つの役割があります。
1-1.栄養を蓄える
肝臓の役割のひとつに、栄養を蓄える機能があります。
脳や活動のエネルギー源となるブドウ糖をグリコーゲンに変換して備蓄し、体内で糖が不足したときにブドウ糖を再生し、いつでも補給できるようにするはたらきがあります。
こうした肝臓のサイクルによって、血糖値を一定に保つことができるのです。
1-2.有害なものを分解する
肝臓には、食べ物や薬物などを介して体内に入った有害物質を分解し、体外に排出させるはたらきがあります。
体にとって有害なアンモニアを、無毒化して尿と一緒に出すのも特徴です。
肝機能が低下して有害物質やアンモニアが血液中に溜まると、脳や体にダメージを与えてしまいます。
肝臓の解毒作用は、体を守るうえでとても大切な機能です。
1-3.胆汁をつくる
肝臓では、脂質の消化吸収を助ける『胆汁(たんじゅう)』が常につくられています。
胆汁のつくられる量が減って脂質が分解されなくなると、胃もたれや胸のつかえなどの症状につながります。
また、胆汁の流れが悪くなると、黄疸を引き起こすビリルビンという物質が処理できず、眼や皮膚が黄色くなってしまうこともあるのです。
肝臓が胆汁をつくり、循環させることで、体に起こる不快な症状が抑えられています。
1-4.血液を固める物質をつくる
血液を固める『血液凝固因子(けつえきぎょうこいんし)』をつくるのも、肝臓の役割です。
ケガで血管が傷ついたときは、この物質のおかげで止血することができるのです。
また肝臓には、血液量を調整するはたらきもあります。
余分な血液を肝臓に貯め、足りなくなったら全身に血液を送り出して再循環させています。
2.【犬の肝臓病】肝臓の数値が上がる原因は?
血液検査で肝酵素の測定や肝臓細胞を検査しても、犬の肝臓の数値が上がる原因は断定しづらいことがほとんどです。
ここでは、犬の肝臓の数値が上がる原因として可能性のある病気について解説します。
2-1.慢性肝炎
慢性肝炎は、肝臓に慢性的な炎症が起こる病気です。
慢性肝炎の主な原因は以下の通りです。
<犬の慢性肝炎の主な原因>
- 肝臓への銅蓄積
- ウイルス感染(犬アデノウイルス1型)
- 細菌感染(レプトスピラ症)
- 薬物投与
- 毒物摂取 など
目立った特徴がないため、各種検査でもはっきりとした原因を見つけることができません。
なお、銅蓄積による肝炎については、遺伝的にかかりやすい犬種があります。
<銅蓄積が起こりやすい犬種>
- ベドリントン・テリア
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ドーベルマン・ピンシャー
- ダルメシアン
- ラブラドール・レトリバー など
一部の食べ物やおやつが体に合わず、気づかないうちに犬の肝臓の負担になっている場合もあります。
2-2.急性肝炎
急性肝炎は、犬の体に急激な刺激が与えられることによって、肝臓に炎症が起こる病気です。
急性肝炎の主な原因は以下の通りです。
<犬の急性肝炎の主な原因>
- ウイルス感染
- 細菌感染
- キシリトール
- マッシュルーム
- カビ
- 農薬、殺虫剤、肥料、洗剤
- 玉ねぎ、球根
- 別の病気からの誘発(熱中症、ずい炎、敗血症ほか)
- 寄生虫(回虫)など
身の回りにある化学薬品・毒物を犬が口にすることでも発症します。
犬が誤って食べてしまった可能性があるときは、速やかに獣医師に相談しましょう。
2-3.脂肪肝
脂肪肝は、犬の肝臓細胞のなかに脂肪が蓄積し、肝臓が正常に機能しなくなってしまう病気です。
脂肪が溜まる主な原因は以下の通りです。
- 糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患がある
- 脂肪分を多く含む食べ物のを過剰に摂取している
- 肥満体質である
脂肪肝の症状が末期になると、『肝硬変』を発症する恐れがあります。
2-4.胆のう粘液嚢腫
胆のう粘膜嚢腫(たんのうねんまくのうしゅ)は、肝臓から分泌された胆汁が胆のう内にゼリー状に溜まり、胆管をふさいでしまう病気です。
はっきりした原因は不明ですが、粘液の過剰分泌、胆のうの運動機能低下、内分泌疾患などが関係しているとされています。
中高齢犬での発症率が高く、加齢により細菌やウイルスにかかりやすいことも原因のひとつです。
2-5.先天性門脈シャント
先天性門脈シャントは、本来なら門脈と呼ばれる血管を介して肝臓で無毒化されるはずの有害物質が、別の異常血管(シャント血管)を通ることで解毒されないまま全身へと送られてしまう病気です。
先天性の文字通り、生まれつきシャント血管があるため、きっかけとなる大きな原因はありません。
しかし、毒素が血液中に溜まると『肝性脳症』を引き起こす恐れがあるので、早期発見が大切です。
先天性門脈シャントは、ヨーキー、マルチーズ、シー・ズーなどの小型犬がなりやすいとされています。
2-6.薬物性肝障害
薬物性肝障害は、医薬品や化学薬品などの薬物摂取によって肝臓障害が引き起こされる病気です。
原因としては、犬に投与している治療薬が体に合っていなかったり、誤って人間用の薬を飲み込んでしまったりすることが考えられます。
どのような薬にも副作用やリスクはありますが、なかでも犬が気をつけたい薬は以下の4種類です。
・抗がん剤
全身をめぐる抗がん剤は、肝臓によって体外に排出されます。
摂取量が増えると、肝臓の細胞が壊され死に至るため大変危険です。
・風邪薬
犬に風邪薬を使用することはほとんどないため、人間の薬を誤飲してしまうことが原因です。
・ステロイド剤
アレルギー治療やリンパ腫のような癌治療にも使われる、犬にとっては身近な薬品です。
数回の投与では危険はありませんが、長期間使用を続けると肝臓の負担となってしまいます。
・抗カビ剤(抗真菌薬)
マラセチア症やカンジダ症の治療として使われます。
治療が長引くことによって、肝臓にダメージが蓄積されていきます。
これらの薬を使用しているからといって、治療の途中で薬を減らしたり中止したりする自己判断は危険ですので、心配なときは獣医師に相談しましょう。
2-7.肝臓腫瘍(肝臓癌)
肝臓腫瘍(肝臓癌)には、良性と悪性があり、犬の場合は悪性腫瘍の発生率が高いとされています。
なかでも『肝細胞癌(かんさいぼうがん)』にかかる犬は全体の約7割で、10歳を超えると発症リスクは高まります。
犬の肝臓癌の原因のひとつは『発がん性物質』の摂取です。
具体的には、食べ物やドッグフードに含まれる保存料や着色料、人間のたばこの煙などを体内に取り込むことでがんにつながりやすくなります。
肝細胞癌の余命は、手術でがんを完全除去すると約4年。無治療の場合は約9ヶ月〜1年とされています。
ただし、個体差があるため、あくまでも一般的な目安です。
3.犬の肝臓が悪いときに出やすい症状
肝臓病を発症しても初期段階では症状がはっきりしないため、悪化するまで飼い主さんが気づかないこともあります。
犬の肝臓が悪い場合、一般的に以下のような症状が見られます。
- 食欲がない
- 元気がない
- おしっこの量が増える
- お腹が膨らむ(腹水)
- 黄疸
- 下痢
- 嘔吐
- 痙攣
- 黒いウンチが出る
- 血が固まりにくい
- 足元がふらつく
愛犬の様子をよく観察し、これらの症状があるときは早めに受診しましょう。
なお、『おしっこの量が増える』『お腹が膨らむ(腹水)』症状については、ステロイド薬の副作用でステロイド肝障害を引き起こしている可能性があります。
ステロイド薬は、犬猫の病気治療に使用されるものですので、肝臓への影響が気になる場合は、かかりつけ医に相談するようにしましょう。
4.肝臓の数値が高い犬におすすめの食事ケア!肝臓に良い食べ物5選
愛犬の肝臓の数値が高いときは、日々の食事ケアで病気を防ぐようにしましょう。
肝臓のはたらきを良くしてくれる栄養源を取り入れて、肝臓の負担を減らすことが大切です。
ここでは、犬の肝臓に良いおすすめの食べ物を5つご紹介します。
4-1.さつまいも
さつまいもは、エネルギー源となる炭水化物をはじめ、ビタミン、食物繊維、ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれています。
さつまいもに含まれるビタミンCは、犬の体内で自己生成できるものですが、肝臓の数値が気になるワンちゃんは意識して摂取したい栄養素です。
消化不良を避けるためにも、皮はむいて加熱調理したものを与えましょう。
4-2.まぐろ赤身
まぐろは食べる部位によって栄養素が異なりますが、ワンちゃんの肝臓には『赤身』がおすすめです。
まぐろの赤身に含まれるセレンという栄養素には抗酸化作用があり、細胞の傷つきを抑えてがん予防に役立ちます。
また、血合いには血管(鉄分)が多く含まれており、肝臓を強くするタウリンを摂ることができます。
まぐろは生でも食べられますが、心配なときは火を通したものを少量ずつ与えるようにしましょう。
4-3.納豆
多くのタンパク質を含み、健康食材として馴染みが深い納豆も積極的に摂取したい食品です。
肝臓の数値が高くなる原因として、腸とつながっている胆管のトラブルが挙げられます。
納豆の発酵作用によって腸内環境が改善し、胆管のトラブルが減ることで肝臓の状態も良くなります。
ひきわりタイプの納豆がおすすめですが、粘り気が苦手なワンちゃんは、フリーズドライされたものやふりかけもよいでしょう。
4-4.キャベツ
キャベツに含まれる『ビタミンU(別名:キャベジン)』には、肝臓のはたらきを促したり、肝臓脂肪を防いだりする機能があります。
生でも加熱しても食べやすい野菜ですが、ビタミンUは熱に弱い性質があるため、そのまま食べるのがおすすめです。
さつまいもと同様ビタミンCも豊富なので、ストレスや加齢によって肝機能が低下しているワンちゃんは、積極的に摂取するとよいでしょう。
4-5.すりゴマ
ゴマに含まれる『セサミン』という抗酸化物質には、肝臓機能を高めるはたらきがあります。
セサミンには肝臓の負担を減らすだけでなく、がん予防やコレステロール値・血圧などを正常に保つ効果もあるので、他の症状が気になるときにも効果的です。
ゴマの殻は消化しづらいため、すりつぶしたものを与えるようにしましょう。
愛犬の肝臓ケアをして健康を守ろう!
犬の肝臓の数値が高くなる原因は、病気だけでなく、普段の食生活や身の回りの環境が影響していることも考えられます。
肝臓病は症状があらわれにくいうえに、原因を特定することが難しい病気です。
「気がついたときには症状が進行していた」なんてこともあり得ます。
日ごろから愛犬の様子をよく観察して、気になる症状や変化があるときは、些細なことでもかかりつけ医に相談することが大切です。
肝臓に良い食べ物もうまく取り入れながら愛犬の肝臓ケアをして、健康維持に役立ててくださいね。
まとめ
- 犬の肝臓の数値が高くなる原因には、慢性肝炎、脂肪肝、胆のう粘膜嚢腫などがある
- 犬の肝臓が悪いと食欲不振、下痢、黄疸などの症状があらわれる
- 犬の肝臓に良いおすすめの食べ物は、さつまいも、まぐろ赤身、納豆、キャベツ、すりゴマなどがある