フレンチブルドッグの最大の特徴は、ユニークで、憎めないかわいらしさのある顔にあります。くしゃっとした顔に広がった大きな耳など見ているだけで癒やされます。ここでは、フレンチブルドッグを飼っている方、あるいはこれから飼おうとしている方に、フレンチブルドッグの魅力をお届けします。
フレンチブルドッグについて
フレンチブルドッグの起源は、19世紀中頃にフランスに移住したイギリス人の織物職人が持ち込んだブルドッグ(イングリッシュブルドッグ)が原種です。当時のイギリスでは、ブルドッグは闘犬(犬と犬が戦うブラッド・スポーツの一種)として、牛いじめ(bullbaiting)という見せ物のために誕生した経緯があります。ブルドッグの鼻がつぶれているのは、牛に噛みつきやすくするためなのです。
ところが、1835年にイギリスでは動物虐待法が成立したことにより闘犬が禁止されました。しかし、ブルドッグを存続させるために小型化し、闘犬としての性格を改良する必要がありました。その闘争的な性格を改良し、ペットとして飼えるようにするために、パリの繁殖家たちの間で、パグやテリアなどの交配を繰り返してフレンチブルドッグは誕生しました。また、この交配を繰り返したことによって、フレンチブルドッグの大きな特徴である「立ち耳」になったと言われています。その特徴的な外観により、フランスの上流社会の貴婦人や芸術家たちに注目され、「ブルドッグ・フランセ(フレンチ・ブルドッグ)」と名付けられ、飼われるようになりました。
フレンチブルドッグが日本にやってきたのは大正時代です。昭和初期までは多く飼われていましたが、当時の日本ではエアコンが普及していなかったこともあり、暑さに弱いフレンチブルドッグの人気が衰えてしまったと考えられています。ところが、2000年代に入ってからは人気が復活し、JKC(ジャパン ケネル クラブ)の犬種別犬籍登録頭数(2017年1〜12月) では9位にランキングしています。
フレンチブルドッグは、テリアやパグなどと同じ鼻が短い短頭種(たんとうしゅ)に属します。外形の特徴は、頭が大きく筋肉質です。毛質は短毛で柔らかく、つやがあります。尾は生まれつきとても短いのが特徴です。なお、フレンチブルドッグは断尾を行うと言われていますが、最近は品種改良が進んでいるため、断尾をすることは少なくなってきました。顔は短く、潰れた鼻とピンと立った「立ち耳」が大きな特徴です。なお、JKCでは、フレンチブルドッグの標準的な体重は8キログラムから14キログラムとされています。
フレンチブルドッグの性格
活発で明るく、とても甘えん坊さん
フレンチブルドッグは遊びが大好きです。気に入ったおもちゃがあるといつまでも遊んでいます。また飼い主様に甘えたがり屋さんです。なでてあげると短いしっぽを振って喜びます。名前を呼んであげるだけでも喜びます。そういう意味でも非常に飼いやすい犬種と言えます。活発なフレンチブルドッグですが、先天的に関節が弱い犬種です。ヘルニアや脱臼などにならないよう、軽めの運動を心がけましょう。
警戒心が強い
フレンチブルドッグは飼い主様には甘えん坊で愛情を振りまきますが、警戒心も強い犬種です。知らない人には目を合わせることなく、じっと様子をうかがっていることが多いようです。警戒心の強さから、わんちゃんの性格にもよりますが、中には知らない人や散歩中に他の犬とすれ違うときに吠えることもあります。
怒られるのが苦手な繊細な一面も
甘えん坊な性格から、飼い主様に怒られると、おとなしくなってしまいます。繊細で警戒心が強いことと関係があるのかもしれませんが、飼い主様の様子をうかがっているように見えます。
フレンチブルドッグは凶暴?いえいえ、とても落ち着いています
見た目は強面のフレンチブルドッグですが、性格は温厚で落ち着いた性格です。また忍耐強いこともあり、あまり怒ったりしません。元気な子、おとなしい子、活発な子、ビビリな子など我々人間と同様に性格による違いはあります。しかしフレンチブルドッグの持って生まれた性質は落ち着いていることや、甘えん坊の性格でもあることから、飼いやすい犬と言えます。
毛色の違いで性格の違いはあるの?
フレンチブルドッグの毛色は大きく分けると4色あります。あなた様が気に入った色や柄で選んでください。
○フォーン:レッドからブラウンまで毛色の濃淡は色々ありますが、全体的に褐色がかったブラウンです。顔だけが黒いタイプをブラックマスクと言います。
○ブリンドル:全身はブラックの単色ですが、よく見ると明るい褐色が混ざっています。また胸部に白い縦線が入っています。ブリンドルの中には、タイガーブリンドルという明るい毛色が立て模様に入っているタイプもいますが、これはとても珍しいタイプとなっています。
○パイド:ホワイトの毛色に、黒い模様が部分的に入っています。それぞれの模様に違いがあり、なかには「牛柄」と呼んでいる人もいます。濃いフォーンが入ったタイプをフォーンバイトと呼びます。
○クリーム:クリーム色の単色で、淡い色合いです。
ところで、フレンチブルドッグは毛色による性格の違いはありません。ブロックでも活発な子もいれば、大人しくてほとんど吠えない子もいます。
よく似ているボストンテリアとの性格の違いは?
フレンチブルドッグとよく似ているボストンテリアは、アメリカを原産国とする犬種です。ボストンテリアは、その掛け合わせの過程でフレンチブルドッグとは姻戚関係にあります。ボストンテリアの性格は一言で言えば「紳士的」と言えます。正義感が強く、感受性豊かで穏やかな性格です。見た目は短頭種であるため、非常に似ていますが、よく見るとフレンチブルドッグとは違います。
耳の形はフレンチブルドッグは丸まっていますが、ボストンテリアはピンと尖っています。カラーもブラックとホワイトです。性格はボストンテリアが紳士的であるのに対して、フレンチブルドッグは甘えん坊です。飼いやすいのは、どちらかと言えばフレンチブルドッグの方かもしれません。
よく似ているパグとの性格の違いは?
フレンチブルドッグとよく似た犬にパグがいます。中国を原産国としたパグの歴史は非常に古く、小型犬の短頭種の基礎的な先祖と言われています。パグの性格はフレンチブルドッグとよく似ています。パグは陽気な性格で飼い主を喜ばせることが大好きな一方で、マイペースで頑固な一面もあります。私も以前パグを飼っていましたが、散歩に連れて行ったときに、何か気に入らないことがあって、一歩も動かなくなった経験があります。なお見た目の違いは、フレンチブルドッグの耳がピンと尖っているのに対して、パグはたれ耳です。また額の真ん中に特徴的なダイヤモンド型のシワがあります。
メスとオスの性格の違い
飼い主さんにべったり甘えん坊な男の子
フレンチブルドッグのオスは甘えん坊で寂しがり屋な性格が多いようです。しかし、オス犬の本能として縄張り意識が強く、マーキングを行うことが多いようです。
女の子はさばさばしている子が多い
オス犬に対してメス犬は、落ち着いていておっとりとした性格です。またメス犬にはヒートと呼ばれる生理があります。2週間程度続くのですが、その間は出血します。家の中で放し飼いをしている場合には、家の中が汚れてしまうためマナーパンツを履かせましょう。またヒート中は、ドッグランなど他の犬が集まる場所は避けるようにしてください。
性格を生かしたしつけのコツ
少しずつ距離を縮めながら行いましょう
犬のしつけは、人と犬が共に暮らす上で必要不可欠なものです。そして、しつけは家族として迎えたその日から始まります。フレンチブルドッグは学習能力の高い犬種です。そして飼い主と一緒にいることが楽しくて仕方ありません。そういったフレンチブルドッグの性格を理解した上で、共に楽しみながらしつけを行いましょう。褒めるときは楽しく、上手にできたときには一緒に喜んであげましょう。飼い主様の喜ぶ様子は、フレンチブルドッグにとっても嬉しいことなのです。また、叱る時間は短くしてください。ダラダラ叱っていると全く効果がありません。最初から上手にできる犬はいません。飼い主さんとの絆を深めながら、少しずつ覚えさせるようにしましょう。
お迎えしたばかりの頃は、フレンチブルドッグの警戒心を解くために、お互いに慣れるためのスキンシップに時間を取りましょう。フレンチブルドッグが、あなたが飼い主であることを理解したら、トイレのしつけ、「待て」などのコマンドを使ったしつけ、散歩などに移ります。なお、フレンチブルドッグが集中できる時間は1回あたり20分程度です。1日3回を目処に行いましょう。
リーダーは飼い主さんであることを認識させましょう
フレンチブルドッグに限らず犬社会は上下関係がはっきりしています。子犬は母親から犬社会を学びます。可愛いからと言って、犬の言いなりになっては絶対にダメです。せっかくしつけても言うことを聞かなくなってしまいます。飼い主=リーダーであることを、しっかりと覚えさせましょう。そのためにも、ダラダラと犬に構うのではなく、メリハリを付けて犬と接しましょう。
フレンチブルドッグを飼う際の注意点
家族として迎えたフレンチブルドッグと、少しでも長く暮らすためにも健康上、気をつけなければならないことがあります。
肥満になりやすい
フレンチブルドッグはとにかく食欲旺盛な犬種です。食べ物を与えれば与えただけ食べてしまうほどです。そのため、肥満になりやすい犬種です。ドッグフードを与えるときも、パッケージに記載されている量を守る必要があります。餌は1日に必要な量を2回に分けて与えましょう。ただし、パッケージに記載されている量は平均値です。あなた様のフレンチブルドッグの糞の様子を見て、柔らかいようであれば少し減らして、硬いようであれば増やしてあげましょう。また、フレンチブルドッグ、ボストンテリアなどの短頭種は、呼吸が下手な犬種のため、体温調節が難しく「熱中症」「気管虚脱」「鼻腔狭窄」などにかかりやすい傾向にあります。さらに肥満が加わると、気道が狭くなって呼吸困難の原因ともなります。また、肥満により、生活習慣病や関節炎などが発症する恐れがあります。適切な体重管理はとても大切なことなのです。
室内飼いがマスト
フレンチブルドッグは、短頭種のため体温調整が難しく、暑さや寒さに弱い犬種です。必ず室内で飼いましょう。また室内でもエアコンを使った温度管理が必要です。
しわのあいだの汚れに注意
フレンチブルドッグの特徴として「しわ」があります。しかし、きちんと手入れをしてあげないと、しわの間に皮脂やホコリ等が溜まってしまいます。手入れをせずに不潔な状態が続くと、菌が繁殖して悪臭が発生したり、皮膚炎の原因となります。こまめにしわの中を掃除する必要があります。
まとめ
甘えん坊で、活発なところが愛らしいフレンチブルドッグ。最大の魅力は、なんといってもそのくしゃっとしたユニークな顔といってもいいでしょう。その一方で警戒心が強い面も持ち合わせています。表情豊かなフレンチブルドッグは飼い主様と寄り添い、飼い主様を喜ばせ、笑顔にさせようとしていると言っても過言ではありません。共に暮らす上で短頭種固有の注意しなければならない点もありますが、一度飼ってしまうと、その魅力の虜になってしまいますよ。