収穫の秋にはさまざまな果物が旬を迎えます。りんごやブドウ、イチジクや柿なども秋の味覚として有名ですね。ですが、中にはブドウやイチジクのようにワンちゃんにあげると害になるものもあるため、果物を与える際は充分に注意が必要です。
今回の記事では、そんな秋の味覚の中でも「梨」をテーマに、いぬにあげてもいいのか、与えるならどんな注意点を守るべきなのかについて解説します。
犬は梨を食べられる?
結論から先に言うと、梨は犬が食べても問題ありません。
犬は梨を食べても大丈夫!
みずみずしいイメージのある梨は、全体の90%が水分でできており、愛犬の水分補給にぴったりな果物でもあります。熟した梨の果肉には犬にとって中毒になるような成分は含まれておらず、ワンちゃんの健康を増進する栄養素も含まれます。
りんごも食べられる?
秋に旬を迎える梨によく似た果物として、りんごが挙げられます。りんごも梨同様に犬に与えてもOKな果物ですが、種や芯は取り除いてあげましょう。皮にはポリフェノールが含まれているので、皮ごと細かく刻んで与えるのがおすすめ。お腹の調子を整えたり抗酸化作用で老化防止やガン予防が期待できたりと犬の健康に役立つ成分が豊富です。
リンゴジュースやりんごゼリーのような加工品は避けた方がいいものの、与え過ぎによるカロリーオーバーやアレルギー症状に気をつければ、おやつとして新鮮なりんごを与えるのはおすすめです。
梨を食べることで得られる栄養素
水分補給のサポート以外にも、梨には犬にとってメリットのある栄養素が含まれています。具体的にどのような成分が含まれるのか、どのような効果が期待できるのかを見ていきましょう。
カリウム
梨に豊富に含まれる栄養素として代表的なものがカリウムです。梨100gあたり約140mgのカリウムが含まれており、疲労回復効果が期待できます。また、カリウムは体内の余計なナトリウム(塩分)を排出し、血圧を下げる機能もあるためシニア犬には嬉しい成分です。
梨を食べるとワンちゃんのおしっこの回数が増えることがありますが、これはカリウムの働きによって余計なナトリウムの排出を促す利尿作用です。犬の健康に良い成分ですが、過剰摂取はやめましょう。とくに腎機能が弱っているワンちゃんにとっては負担になるため注意が必要です。
アスパラギン酸
アスパラギン酸とは、動物の体に欠かせない非必須アミノ酸の一種です。ワンちゃんのエネルギー代謝を向上させるほか、利尿作用や疲労回復効果が期待できます。アンモニアの排泄を促す効果もあることから、代謝改善に役立ちます。
食物繊維
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類がありますが、梨に多く含まれるのは水溶性の食物繊維です。腸内環境の改善や消化器官の機能維持につながるほか、便秘防止や下痢の改善にも効果があります。
また、コレステロールの吸収を抑えたり、血糖値の急激な上昇を防ぐ効果も期待できます。飼い主である人間だけでなく、犬や猫などのペットの健康にもいいと注目されている栄養素ですが、過剰摂取でお腹が緩くなる可能性もあるので注意しましょう。
プロテアーゼ
肉料理を作る際に肉と一緒に梨を煮込むことがありますが、これは梨に含まれるプロテアーゼという酵素に肉を柔らかくする効果があるからです。
プロテアーゼは、肉の主成分であるタンパク質を分解する働きがあるため、ワンちゃんの主食であるドッグフードと一緒に摂取することで消化を助けてくれます。
梨の与え方と適切な量
犬にとって嬉しい効果がある梨ですが、丸ごと1個与えていいわけではありません。愛犬の健康のためにも、梨の正しい与え方と適切な量について知っておきましょう。
皮は剥いて細かく刻む
梨を犬に与える際は、皮は取り除いて小さく刻んであげてください。食べ物を丸呑みしてしまうワンちゃんは多いため、梨を喉に詰まらせてしまう危険性があるからです。
また、梨の皮は硬く消化不良につながるおそれがあるため、積極的に与える必要はありません。梨の種や芯も取り除き、果肉だけを与えましょう。
加熱せずに生のままで
梨に豊富に含まれるカリウムは、熱に弱く加熱すると成分が壊れてしまいます。せっかくの栄養素が摂取できないのはもったいないので、加熱したり加工したりせず生のまま与えるのが一番です。
おやつ程度の量で留めよう
梨といえばシャキシャキとした噛みごたえが特徴的ですが、この食感は「石細胞」という梨の細胞に由来するものです。犬の便秘改善の効果もありますが、与え過ぎると下痢や嘔吐の原因になります。
ワンちゃんによっては、梨の硬めの食感がおもちゃのように感じられて、「もっと欲しい!」と顔を近づけておねだりしてくることもあるかもしれません。
噛むことはストレス解消にもつながりますが、梨ばかりを好んでドッグフードを食べなくなったり、カロリーオーバーによって肥満の原因になったりすることもあるので、与え過ぎには注意してください。目安として、1日の食事量の約10%以下に抑えるとよいでしょう。
犬に梨を与える際の注意点
基本的にスーパーなどで手に入る梨をそのまま与えても問題ありませんが、与え方を間違うと愛犬の健康に悪影響を及ぼしてしまうことがあります。梨を与える際に気をつけたい注意点は以下の4つです。
必ず熟れた梨を与えること
実家からの仕送りやおすそ分けで、未成熟の梨をもらうことがあるかもしれません。実は熟していない梨には「アミグダリン」という有害な成分が含まれています。そのため、絶対に愛犬に与えてはいけません。
アミグダリンは種にも含まれるため、梨を与える際は種を必ず取り除き、熟した果肉だけを与えるようにしてください。
与え過ぎは下痢や嘔吐の原因に
石細胞や食物繊維の働きによって、梨は愛犬のお通じを良くしてくれます。適量を与えれば、腸内環境を整えたり疲労回復の手助けになったりと大きなメリットが得られるでしょう。しかし過剰摂取してしまうと、どんなものも毒になります。
梨の与え過ぎは、消化不良の原因になり軟便や下痢、嘔吐につながる可能性があります。一時的な下痢や嘔吐は様子をみても構いませんが、もしも長く続くようなら動物病院を受診し、獣医師さんに相談してください。
腎臓病がある犬には与えないこと
梨に豊富に含まれるカリウムは、摂取し過ぎると腎臓に大きな負担をかけてしまいます。腎不全をはじめとする腎臓病を患っている犬の場合、梨を食べることで健康を害するリスクがあります。
梨は犬に絶対に必要な食べ物ではないので、腎臓病のあるワンちゃんには与えないようにしてください。
アレルギー症状には要注意!
ワンちゃんの中には、梨アレルギーを持つ子もいます。アレルギー症状には、下痢や嘔吐のほか、目の充血や皮膚のかゆみなどがあります。梨を食べた後にいつもと様子が違うようなら、アレルギーとの関連性が考えられるので動物病院に相談してみましょう。
その際は、どのくらいの量をいつ与えたのか、すぐに説明できると安心です。
梨はおやつにぴったりな果物!与え過ぎには注意しましょう。
梨は果物の中でも水分が豊富で、愛犬の水分補給のサポートにぴったりです。食物繊維も豊富に含まれるため、腸内環境を整えお通じを改善する効果も期待できます。種や皮を取り除き、未成熟の梨を避けるといった注意点を守れば、愛犬の健康増進に役立つでしょう。
ただし、腎臓病があるワンちゃんやアレルギー持ちの子には、与えないもしくは獣医師へ相談してから与えてください。普段の食事に梨を上手に取り入れて、ワンちゃんと楽しく暮らしましょう。
まとめ
- 皮や種、未成熟のものを避ければ、梨は犬に与えても問題なし
- 梨にはカリウムや食物繊維など、健康を増進する栄養素が豊富に含まれる
- 与える際は生のまま細かく刻み、与え過ぎには注意しよう