柴犬は日本古来からの土着犬で、飼い主に対して強い忠誠心を示す賢い犬種です。元々は運動量の多い犬種ですが、気まぐれで動かなくなることもあり、他の犬種にはない愛らしい一面を見せてくれます。
狩猟犬をしていたことから本能的に攻撃性を見せる場合があります。そのため、どちらかといえば初心者よりも自分でしつけができる方に向いています。
警戒心が強い一面も持ち合わせており、初対面の人や犬にはなかなか馴れ合おうとしません。一方では仲間思いで愛情深い性格でもあるため、一度仲良くなると良きパートナーとなってくれるでしょう。
また、抜け毛が非常に多いため、犬アレルギー持ちの方は注意してください。
犬種の特徴
- 適応性
- アパートマンションでの
生活に適応できるか、
飼育スペースが必要か - 初心者の飼いやすさ
- 繊細さ・神経質・内向的
- 1匹でいても耐えられるか
- 寒さへの耐性
- 暑さへの耐性
- 親しみやすさ
- 家族への愛情表現・社会性
・愛情欲求度の多さ - 子どもとの仲良くなる度合い
- 他の犬に優しいか
- 見知らぬ人でも優しいか
- 健康面
- 脱毛量(抜け毛の量)
- よだれの多さ・唾液量
- 手入れの簡単さ
- 一般的な健康度合い
(病気になりやすさ) - 体重が増えやすいか
- しつけしやすさ
- トレーニングが簡単か
- 頭の良さ
- かみ癖(狩りへの欲求)
- 吠え癖
- 行動面
- 運動量、散歩時間
(エネルギーレベル) - 1日の餌(ドッグフード)の量
- 活発さ・活発度・遊び心
柴犬について
犬種グループ | 第5グループ 原始的な犬・スピッツ スピッツ & プリミティブ・タイプ SPITZ AND PRIMITIVE TYPES 日本犬を含む、スピッツ(尖ったの意)系の犬 |
大きさ(体高) | 男の子:39.5cm(±1.5cm) 女の子:36.5cm(±1.5cm) |
平均体重(理想の体重) | 7.5〜10kg |
平均寿命 | 12〜15歳 |
繁殖目的(用途) | 家庭犬、猟犬 |
毛の特徴 | 硬い上毛と柔らかい下毛を併せ持つダブルコートで、換毛期に抜け毛が多いのが特徴的です。 |
毛色(カラー) | 赤、黒褐色、胡麻、黒胡麻、赤胡麻 |
グルーミング・トリミングの必要性 | 最低でも週に1度のブラッシング、3〜4ヶ月に1回のシャンプーが必要。 |
成犬になるまでの期間 | 生後半年頃から青年期に入り、一歳半頃には立派な成犬になります。 |
飼養頭数 | 10,307頭 |
レア度(日本での登録犬数 ケネルクラブ) | 7位(一般社団法人ジャパンケネルクラブ 2019年調査) |
犬種の詳細
日本の天然記念物にも登録される土着犬
柴犬は紀州犬、四国犬、北海道犬、甲斐犬、秋田犬と並んで日本の天然記念物に登録されている貴重な犬種です。いずれの犬種も尖った立ち耳、くるりと巻いた尾が特徴的です。
現代では一般的なペットとして親しまれていますが、昭和初期に柴犬が絶滅寸前になったため、貴重な日本犬を保護すべく天然記念物に選ばれました。
なお、豆柴という小型の柴犬が流行していますが、日本では「豆柴」と明記した血統書は発行されていないため、サイズは関係なく同じ柴犬という扱いになります。
飼い主に忠実だけどトレーニング必須
柴犬はとても賢くて飼い主に忠実な犬種として有名です。自分よりも立場が上だと認めた相手のいうことはしっかりと聞いてくれるのですが、柴犬から下に見られるようになってしまうと、反対に全くいうことを聞かないわがままな性格になってしまうので注意しましょう。
過去に何度か犬を飼ったことがある方や、トレーニングについて学んだことがある方向けですが、もし初心者で柴犬を飼いたい場合はプロのドッグトレーナーに相談することをおすすめします。
ブラッシングは毎日行った方が良い
柴犬は毛が伸び続ける犬種ではないため、定期的なトリミングは必要とされません。
また、あまり皮膚が強くない子が多いので、室外飼育で酷く汚れている場合をのぞいてシャンプーも年に4〜5回程度で大丈夫です。
ただし、柴犬は他の犬種に比べて抜け毛の量が多いため、こまめなブラッシングを必要とします。できれば毎日、最低でも1週間に1回はブラッシングしておかないと、部屋や飼い主さんの洋服が毛まみれになってしまうでしょう。
自由に走れるスペースが必要
柴犬は元々山岳部で狩猟犬として活躍していた犬種なので、多くの運動量を必要としています。
自由に駆け回ることができる、広い庭付きの家庭での飼育が理想的です。自宅に庭がない場合は、長時間の散歩に出かけたり、定期的にドッグランなどに連れて行って、ストレスを発散させてあげてください。
ただし、柴犬は狩猟本能から小さな生き物を追いかけたくなる衝動に駆られる場合があります。ドッグランなどで放し飼いする前には、トラブルを防止するためにも、事前にある程度のトレーニングを行っておきましょう。
歴史
柴は日本海に面した山岳地帯に生息した日本古来の土着犬で、小動物や鳥の猟犬として飼われていました。
柴犬という名前の由来はいくつかあり、「柴」は「雑木」を意味する言葉なので、柴犬が狩りをした茂みにちなんで名付けられた、もしくは柴犬の燃えるような赤毛が雑木の紅葉と似ていたからともいわれています。また、古い言葉では「柴」は「小さいもの」を指すためという説もあります。
1868年から1912年にかけて、スポーツハンティングを目的にイギリスからセターやポインターが輸入されると、1926年までには異種交配が流行して純血の柴犬はほとんどいなくなってしまいました。
1928年頃から一部のハンターが純粋な柴犬の保護に関心を示し始めたことで、1934年社団法人日本犬保存会が制定されました。
さらに1936年には日本の天然記念物に指定され、繁殖で改良されることで今日知られる犬種となりました。
アメリカへ最初に柴犬が輸出されたのは1954年とされていますが、実際1970年代までについては文書としてほとんど記録が残っていません。1979年にアメリカで最初の子犬が生まれ、1993年にアメリカンケンネルクラブで犬種認定されました。
サイズ
男の子は39.5cm程度で女の子は36.5cm程度です。体重は7.5〜10kgになります。
犬種の性格
柴犬は忠実で愛情深く、仲間を大切にする犬種ですが、一方で頑固で警戒心が強い一面もあり、知らない人には攻撃的になりがちです。
柴犬は賢い犬種だといわれていますが、同じく賢いといわれるゴールデンレトリバーなどとは少し性質が異なります。レトリーバーは人懐っこい性格のため、飼い主の指示を喜んで受け入れますが、柴犬は忠実な性格をしているため、あまり気が進まないことでも頑張ってこなそうとします。ただし褒められることは好きなので、上手に「待て」や「おすわり」が出来た時はしっかりご褒美を与えてあげましょう。
また、頑固な一面もあり、自分のごはんやオモチャが奪われるのを嫌います。たとえ飼い主さんや同居犬が相手でも、自分のものを守ろうとして攻撃的になることがあるので注意してください。ただし、幼い頃から適切な訓練を行うことで気質が変わることもありますので、しつけは出来るだけ若いうちからしっかり行いましょう。
なりやすい病気
股関節異形成症、肘関節異形成症、甲状腺機能低下症などが特によく見られます。
その他、小型犬に共通する特徴として、アレルギー、癌、膝蓋骨の脱臼(パテラ)なども起こりやすいです。
また、日本犬は高齢になると認知症を発症しやすいという特徴を持ちます。
股関節形成不全
大腿骨と股関節がピッタリ噛み合わない、遺伝性疾患です。後脚に不快感や痛みを伴い跛行を示します。
また、高齢化とともに炎症が悪化することが多いです。
肘関節異形成症
発育期に急激に成長することで肘関節に関節炎が起こり、進行するとスムーズな歩行が難しくなります。
成長期に発症する疾患のため、5~9カ月齢前後で頻繁に見られます。
甲状腺機能低下症
脱毛、肥満、嗜眠、てんかん、黒い斑点、その他の皮膚疾患など、さまざまな症状を引き起こす甲状腺の障害です。
ウイルスなどの異物を攻撃するはずの免疫が暴走し、自身の甲状腺を異物と判断して攻撃してしまうことで炎症が起こります。
臭い(体臭)
柴犬は他の犬に比べて臭いが少ない犬種です。
一般的に犬は1ヶ月に1回ほどのシャンプーが推奨されていますが、柴犬は洗いすぎることで皮膚が乾燥するため、飼い主さんの多くは3〜4ヶ月に1回の頻度でシャンプーを行っているようです。
毛並みのお手入れ・グルーミングのしやすさ
柴犬は一年を通して抜け毛が多く、換毛期にはかなりの量が抜け落ちます。そのため、最低でも1週間に1回は必ず念入りなブラッシングを行ってください。
また、柴犬の健康を保つためにも、爪切りや耳掃除、歯磨き、肛門腺しぼりなどのケアも定期的に行いましょう。
なお、柴犬はあまり体に触られるのを好まない子が多いため、動物病院で検査を行うなど、いざという時に困らないためにも、子犬の頃からブラッシングなどのお手入れを行って慣れさせてあげてください。
食事
柴犬の成犬は平均体重がおよそ7.5〜10kgなので、1日に508〜630kcalを必要とします。さらに、子犬の時は成長のためにたくさんの栄養を必要とするため、フードの量を増やしたり、子犬用のフードを与えてあげましょう。
柴犬には、一般的に犬が食べてはいけないとされているネギ類、ぶどう、チョコレート、カフェインが含まれるもの、人間の食べ物を与えないでください。これらの食材は、中毒などの危険な症状を引き起こす恐れがあります。
しつけ
忠誠心が強い犬種なので、自分がボスと認めた相手からのいうことは良く聞いてくれます。しかし、飼い主が舐められてしまうと全くいうことを聞かなくなってしまうので注意が必要です。
柴犬は外で飼育される方も多い犬種ですが、台風などで室内に入れた際に至る所で粗相をしてしまう恐れがあるため、日頃からトイレトレーニングを行っておきましょう。
元々狩猟犬として活躍していた犬種なので、追跡本能が働いて小型犬などを追いかけ回してしまうことがあります。ドッグランや散歩コースでのトラブルを避けるためにも「待て」「おすわり」「伏せ」といった、最低限のしつけは行いましょう。
また、強い所有欲を持っているため、気に入ったオモチャや食べ物を意地でも離そうとしないことがありますので「ちょうだい」も教えましょう。
どの犬種でもいえることですが「社会化」が非常に重要です。幼い頃からさまざまなものを見せて触れ合わせておくことで、臆病になったり、喧嘩しやすくなったりしてしまうことを防げます。
他のペットとの共存度
柴犬は狩りに利用されていた犬種ということもあり、小動物や他の小型犬に対して突然攻撃的な一面を見せることがあります。幼い頃からしつけをしていても獲物を追いかけて捉えようとする本能が働いてしまう可能性がありますので注意が必要です。多頭飼いや他の小動物と暮らす場合は、居住スペースを分けたりリードで繋いでおくなどの工夫をしておきましょう。
また、柴犬は社会化期に適切な訓練を受けていれば、落ち着きがあって人に対して友好的な性格の犬に育ちます。
ただし、子どもが尾や耳を引っ張るなどのいたずらに対して反撃してしまう危険性もありますので、柴犬と子どもが触れ合う際はしっかり監視しておいてください。