納豆は独特のにおい、粘り気、そして健康効果と、私達人間にとって存在感抜群なごはんのおとものひとつですが、実は犬にとっても嬉しい栄養が満点の食べ物であることをご存知でしたか?「なんだかうちの子、最近食欲がないみたいで…」なんてお悩みを持った飼い主さんにも、もしかしたら納豆が力を貸してくれるかもしれません。
犬に納豆を与えても大丈夫?納豆の栄養効果は?
独特のにおいや味とともに機能性食品としての認識が定着している納豆ですが、あくまでそれは人が食べる前提として語られているものですよね。果たして犬にとって害はないのか、どういった効果があるものなのか、そういった飼い主さんの疑問にまずはお答えしていきましょう。
犬に納豆をあげてもいいの?毎日は与えすぎ?
基本的には、納豆の原材料である大豆は犬が食べても問題のない食べ物です。ただし大豆アレルギーがある場合は絶対に避けるようにしましょう。人間の場合は大豆アレルギーであっても納豆なら食べられるというケースもあるようですが、危険をおかしてまで与えるようなものではありません。
また、シベリアンハスキー、シャーペイ、アイリッシュセッターなどの犬種は先天的に大豆を消化する機能(酵素)を持っていません。これを大豆不耐症といい、いわゆる消化不良のためアレルギーほど重篤ではないものの、下痢や体調不良が症状として挙げられます。
しかし発酵された納豆は、大豆と異なり非常に柔らかく消化が良い食材です。不耐症の程度も様々で、先述の犬種でありながら平気で食べているわんちゃんも少なくありませんが、最初に与えるときは必ず数粒から始めてみて、問題がないようであれば適度に与えてみましょう。
適切な分量の範囲内で、愛犬の体調も変化なく良好であるのなら、毎日食べさせても問題ないでしょう。大粒タイプよりもひきわりタイプのほうがより消化しやすいため、小型犬だけではなく大型犬にもおすすめです。
納豆の代表的な栄養素5種
豊富と言われている納豆の栄養素ですが、具体的にはどのようなものが犬にも有効なのかご紹介します。
- カルシウムは相乗効果で高吸収率
- ビタミンKで丈夫な身体に
- 大豆サポニンは免疫力を高められる
- ナットウキナーゼが血液をサラサラに
- 良質なタンパク質は肝臓の負担を和らげる
納豆のカルシウム含有量は100gあたり90mg。これだけ見ると同量の牛乳110mgより少し足りないのですが、納豆に含まれているビタミンKはカルシウムを骨に沈着させて形成を促す作用があるのです。この相乗効果によって効率的にカルシウムを吸収することができます。
ビタミンKは骨を強くするだけではなく、動脈硬化や心臓病を予防するたんぱく質の活性化にも活躍します。出血した場合にも速やかに血を凝固させる働きを活性化させるなど、活発に遊ぶわんちゃんには心強い味方となる栄養素と言えるでしょう。
大豆サポニンに含まれているのは強い抗酸化作用です。血管内の脂肪の蓄積を防ぎ、免疫力を高め、結果的に血流の改善や肥満予防に繋がります。
この栄養素は名前通り大豆由来のものなのですが、豆腐や豆乳などでは減少してしまい、水煮では水分中に溶け出してしまうという取り扱いの難しいものです。納豆こそが特に効率的に摂取できる方法として知られています。
納豆独自の酵素であるナットウキナーゼは血中の血栓を直接溶かす働きを持っています。納豆の血液サラサラ効果は主にこのナットウキナーゼの働きを指していると言えるでしょう。血流の改善や血圧降下作用もあり、血圧や血管、肥満などが気になるわんちゃんには取り入れるのが望ましい栄養素です。
畑の肉とも言われる大豆は良質なたんぱく源ですが、柔らかく煮ても消化に負担がかかるのが与えづらいところですよね。しかし納豆菌の作用によって大豆のたんぱく質がほどよく分解されると、犬にとって食べやすいものに変わります。
それだけではなく、上質なたんぱく質は肝臓で働いている酵素にとって大事な栄養素です。言葉を発さない愛犬だからこそ、沈黙の臓器と言われる肝臓の機能を日常的に整えてあげたいですよね。
まだまだある納豆の嬉しい栄養成分
食物繊維に加えて腸内環境を整える納豆菌、疲労回復効果のあるレシチンなど、どのライフステージのわんちゃんでも嬉しい栄養成分が揃っています。特に納豆菌の効果は体臭や糞便のにおいに効果があるとも言われているため、気になる飼い主さんは試してみてはいかがでしょうか。
犬に納豆をあげる時の注意点!
それでは実際に愛犬に納豆をあげる前に、飼い主さんはどんなことを気をつけておくべきなのでしょうか?
愛犬の大豆アレルギーには要注意!一粒ずつから様子を見よう
納豆の原料である大豆はアレルゲンとしてもよく知られています。先述したように大豆アレルギーの犬にとってはご法度のため、別の食べ物を考えてあげましょう。
愛犬がアレルギーかどうか分からない場合は数粒から始めて、身体を痒がったり下痢や嘔吐などの症状が出ていないかを注意深く見守ってあげてください。24時間経っても異変がなければ大丈夫でしょう。ただ、数日後に異変が出る場合もあるので一週間はよく観察してくださいね。
納豆を与える目安を知って適切に与えよう
消化がよく、豊富な栄養素を効果的に摂取できる納豆。しかし他の食材と同じように食べすぎはやはり禁物です。例えば納豆に含まれているミネラルは身体のあらゆる機能を整える必須栄養素ですが、過度に摂取することで今度は悪影響を及ぼしてしまいます。
また、歯ごたえのない納豆を食事のメインにしてしまうと、歯周病になってしまったり歯や顎が衰えてしまったりと、犬の口腔周辺に異常が起きる恐れもあります。あくまでトッピングやおやつとして与えるようにしましょう。
便秘解消と思いきや下痢に?納豆に含まれる食物繊維の落とし穴
愛犬が便秘しがちなら積極的に与えたい食物繊維ですが、与えすぎると消化しきれず、余剰の食物繊維が原因でガスがお腹に溜まったり下痢を引き起こす恐れがあります。便秘改善なら、少しずつ様子を見ながら時間をかけて行うようにしましょう。
抗凝固剤の大敵!服薬中ならかかりつけの獣医さんに相談しよう
血栓を溶かし血液をきれいにする納豆ですが、同様に血液をサラサラにする役目を持つワルファリンなどの抗凝固薬を服用している間は絶対に食べてはいけません。納豆に含まれるビタミンKがワルファリンの血栓溶解作用を弱め、血液凝固を起こりやすくしてしまうのです。
抗凝固薬は心臓弁膜症などの心臓病でも処方されることがありますので、愛犬がどのような成分の薬を服用しているのか確認をしておきましょう。このお薬に関わらず、何らかのお薬を服用していたり病気を患っている場合は、獣医さんの指導に従ってご飯やおやつを与えてくださいね。
納豆は腎臓に持病があるわんちゃんには禁物
摂取後にエネルギーとして消費されるたんぱく質は、最終的に老廃物となって身体に残ります。その老廃物を体外へ除去する役目を担っている腎臓なのですが、摂取するたんぱく質が多ければ多いほどその負荷は比例していきます。
そのため、腎臓が気になる子であれば納豆を与えるのは避けておきましょう。極端にたんぱく質を制限してしまうと体力低下に繋がりますが、健康ない犬であればドッグフードから得られるたんぱく質だけで十分です。
ごはん?おやつ?納豆を与える量と適切なあげ方
納豆の与え方としてよく挙げられるのが、ドッグフードへのトッピングです。愛犬の食欲不振が気になる飼い主さんには特におすすめの方法でもあります。
愛犬に納豆を与えたことがない飼い主さんでも、チーズを与えて大好評だった経験はあるのではないでしょうか。実は犬の嗅覚にとって発酵食品の独特のにおいは魅力的なもののようで、興味津々に見つめたあとそのまま口に入れてしまうことも珍しくはありません。おやつとして与える場合は、あげすぎないように気をつけましょう。
最初は少量から慣らしていくことを前提として、では一日に最大どの程度の量までにしておくのが良いのでしょうか。
犬種や体型、大豆に対する耐性によって個体差があるため明確な基準はありませんが、大型犬でも標準的な四角いパックの1/2(およそ25g)を限度としておくべきでしょう。小型犬なら小さじ一杯程度で十分です。
標準的な四角いパックに入っている納豆のカロリーは100Kcal程度に相当します。他のごはんやおやつとの兼ね合いも考えて、カロリー過多にならないよう気を付けてあげてくださいね。
与え方と量を守って愛犬に納豆を与えよう
納豆は人間にも犬にも様々なメリットが期待できる優れた食品です。たんぱく質、整腸作用、免疫力の向上や血液の改善など様々な効果があり、愛犬の健康面で不安を感じる飼い主さんの心強い味方になってくれるかもしれません。
しかし、いかに優れているとはいえ、基本的には人間の食べ物であることを忘れないようにしましょう。機能性を目的とした普段遣いではなく、例えばいつものドッグフードに時々トッピングしたりして愛犬を楽しませるのが、負担のかからない納豆の与え方ではないでしょうか。