シャリシャリとしてみずみずしい梨は秋の美味しい果物です。飼い主さんが美味しそうに食べていたら、ワンちゃんも欲しがるのではないでしょうか。そもそも梨を犬に与えてよいのか、与えるメリットはどのようなものがあるのか、与え方の注意点を交えて知っていきましょう。
犬は梨を食べられる?
梨は食物繊維と水分を豊富に含んだ果物です。カリウムやアスパラギン酸などの犬にも良い栄養素を含んでいる梨は、犬に与えても基本的には問題ありません。
与え方については、別の項で詳しく解説していきます。
梨に含まれている成分と効果・効能
ソルビトールで腸内の環境改善
ソルビトールは、便秘改善やコレステロール値を下げる効果が期待できる糖アルコールの一種です。糖分ですが、身体への吸収が緩やかなので虫歯になりにくい特徴があります。また、ソルビトールには水分を保持する働きがあるので、腸内環境を改善してくれます。
アスパラギンで疲労回復
梨には哺乳類の身体を作るために必要なアミノ酸の一種であるアスパラギン酸が多く含まれています。アスパラギン酸はアミノ酸の中でも、非必須アミノ酸で利用作用や疲労回復の効果が期待できます。
また、体内に溜まると有害物質になるアンモニアの排出を促進させる働きもあります。そして、皮膚や筋肉などの身体を作るタンパク質の合成をサポートするため、犬の身体の健康維持に役立ちます。
プロテアーゼで消化をサポート
犬の食事はタンパク質がメインです。梨に含まれるプロテアーゼというタンパク質を分解してくれる酵素を摂取することで、消化をサポートしてくれます。
クエン酸・リンゴ酸で食欲増進
梨には少し酸味がありますが、この酸味はリンゴ酸とクエン酸の成分が含まれているからです。リンゴ酸とクエン酸は乳酸を分解し、エネルギーに変換してくれるため疲労回復や新陳代謝アップが期待できます。また、疲れた胃腸を正常に戻してくれる炎症抑制作用もあります。
カリウムを血圧を下げる
梨に含まれているカリウムは、ナトリウムと上手くバランスを取ってさまざまな働きをします。そしてカリウムには利尿作用がありますが、体内の余分な塩分(カリウム)を体外へ排出して血圧を正常に維持する作用があります。
また、カリウムは筋肉の機能を調整する働きがあるので、カリウムが足りなくなると身体がだるくなって疲労を感じます。カリウムを摂取してナトリウムとのバランスを維持することで、疲労回復に役立ちます。
食物繊維で整腸作用
梨には豊富な食物繊維が含まれています。食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があり、梨は水溶性食物繊維を多く含んでいます。この水溶性食物繊維は、食べ物を食べると腸内で水分を吸収しながらゆっくり移動し、糖の吸収を抑えて血糖値が上がるのを抑えてくれる働きがあります。
そして、食物繊維にはコレステロールの吸収を抑えて、腸内の老廃物を体外へ排出し善玉菌を増やす作用もあります。腸内環境を整えて便秘解消に役立ってくれますが、摂りすぎると消化不良を起こしてしまうので注意しましょう。
豊富な水分で脱水防止
梨は約90%が水分でできているので、犬の水分補給に最適です。あまり水を飲まなくなってしまった犬や、夏バテで食欲が落ちているときなど適度な甘みがあり歯ごたえのいい梨は熱中症対策にも役立ちます。
犬の身体は構造成分の約60%が水分なので、水分が足りないと新陳代謝が悪くなり脱水になって腎臓への負担がかかってしまいます。梨をうまく取り入れて、犬が脱水にならないようにしてあげましょう。
食べ過ぎに注意!犬に梨を与えるときの量や注意点
犬に梨をあげるときはどれくらいの量がいいの?
どんな食べ物でもあげすぎはよくありません。梨は胃腸が弱っている時に食べ過ぎると、腸内細菌の働きによってガスが腸に溜まることがあります。
与える量は、5kgの犬の場合で1日20g程度です。だいたい8分の1個くらいの大きさです。
また、梨のシャリシャリの食感はペントザンやリグニンという食物繊維が原因で、これらは石細胞と呼ばれる成分です。食物繊維なので摂取すると便秘改善などに作用しますが、石細胞は犬には消化しにくい成分なので、与えすぎると嘔吐や下痢の原因になる恐れがあります。
そして、梨に含まれるソルビトールという糖アルコールは過剰に摂取するのは良くないと言われるので、適量を守って与えるようにしましょう。
犬にあげるときは梨の皮・種・芯は取り除いて細かく刻んであげる
犬に梨を与えるときに、大きいまま与えてしまうと喉に詰まらせる恐れがあります。犬は食べ物をよく噛まないで丸呑みしてしまうので、大きなまま与えると食道に詰まってしまうことがあり、そうなると手術が必要になります。梨を与えるときは小さく刻んであげましょう。
また、芯や種にはアミグダリンという毒性の成分が含まれているので、取り除いて与えるようにしましょう。皮は消化しにくいため、剥いてあげるか皮ごとすりおろしてあげるといいでしょう。
梨は加熱しないで生のまま犬にあげる
梨に含まれているビタミンCは加熱に弱い成分です。また、梨にはカリウムも含まれていますが、カリウムも熱に弱い成分です。
梨に含まれている栄養を壊さずに与えるには、生のまま与えるのがいいでしょう。
腎臓病がある犬には梨はあげないで
梨にはカリウムが含まれているため、利尿作用によりおしっこの量が増えることがあります。おしっこが増えることは腎臓に負担をかけることになるので、腎臓の病気がある犬には与えないようにしましょう。
犬に梨アレルギーがないか確認してからあげる
熟していない梨を愛犬にあげないように!
スーパーなどで手に入る梨は完熟したものなので心配はありませんが、梨狩りなどの梨はまれに未成熟のものがあります。
未熟の梨にはアミグダリンという青酸配糖体が含まれているため、これを食べてしまうと身体の中で分解されて青酸毒が発生してしまうことがあります。そうなると、中毒症状を引き起こして危険なので与えないようにしましょう。
梨を食べてから下痢や嘔吐があったらアレルギーかも
梨を食べたあとに、皮膚が赤くなったり痒がることがある、下痢や嘔吐の症状が出たらアレルギーかもしれません。また、アレルギーの症状として、鼻水やくしゃみ、目が充血したり涙が出ることもあります。
犬に梨を食べさせたら歯磨きを!
梨は程よく甘みがあり、シャキシャキした歯ごたえがあるので好きな犬は多いでしょう。水分も多く含まれているので水分補給に適しているとともに、食欲が落ちているときにご飯にトッピングする使い方もできます。果物は皮と実の間に栄養が多いのですが、皮は消化に悪いので皮をむくか皮ごとすりおろして食べさせるようにしましょう。そして、梨の糖は虫歯になりにくいとはいえ、食事をしたあとはしっかり歯磨きをして歯の健康を守ることも大切です。
このように、梨は与え過ぎなければ犬の健康に役立つ果物なので、与え方に気をつけて食べさせてみてもいいのではないでしょうか。