犬を飼育されているご家庭では、どうしても犬の臭いを避けることはできません。とは言うものの、少しでも愛犬の体臭は抑えたいものですね。体臭の原因を探れば、臭いを抑えることは可能です。また体臭がきつい場合には、もしかしたら病気にかかっていることも考えられます。ここでは、愛犬の気になる体臭について、その原因と対策をご紹介します。
犬の体臭の原因になるものは?
あなたの愛犬の体臭の原因をきちんと把握する必要があります。犬は肉球や鼻先などの身体の限られた箇所に涙腺がありますが、皮膚には涙腺がないため汗をかきません。体温調整は口をハアハアと開けて行っています。しかし、皮膚の内側にある皮脂腺と言う脂分を分泌する腺が多く、毛穴から分泌された皮脂が発酵と酸化を起こすために体臭が発生します。犬の表皮上の細菌は、この皮脂に含まれる成分を分解して増殖し、体臭の原因となっています。つまり、愛犬の身体をシャンプーなどで清潔に保っておけば、体臭を防ぐことができるのです。かといって、毎日お風呂に入れるのは、肌に必要な皮脂を落としてしまい、かえって皮膚を傷つける要因になります。また皮脂を落としてしまうことにより、皮膚が乾燥しフケの原因ともなります。様子を見ながら、月に1~2回程度シャンプーしてあげることにより、体臭を防ぐことができます。シャンプーの頻度については、愛犬の状態を見ながら、かかりつけのトリマーさんや獣医師に相談してみてもいいでしょう。
ドッグフードが原因かも?!
体臭の原因として、ドッグフードも体臭の原因のひとつにあげることができます。あなたの愛犬の体質に合わないドッグフードは、腸内バランスを崩すこともあります。無添加で主に自然素材を使ったドッグフードを与えれば、腸内バランスが崩れることも少なく、体臭を抑えることができます。体臭が気になる場合、おやつを与えるときにも、ジャーキーよりも犬用のチーズ、野菜、キノコなどを与えるとよいでしょう。我が家では茹でたキャベツをタッパーに入れて冷蔵庫に保存して、しつけや犬と遊んだ後に茹でキャベツを与えています。また、きゅうりの輪切りなども喜んで食べています。我が家は多頭飼いなので、市販のおやつはオサイフに厳しいという面もありますが、なるべく犬の身体に負担のかからないものを与えたいと考えているからです。
シャンプーが十分にできていない可能性も?!
シャンプー後のドライヤー、しっかり乾かせていますか?
体臭予防に定期的にシャンプーすることはとても大切なことですが、シャンプー後にドライヤーでしっかりと乾かさないと、残った水分に雑菌が繁殖して体臭の原因となります。例えて言うと雑巾のような匂いです。ドライヤーで乾かすときには、毛の流れに逆らって、毛の付け根からしっかりと乾かします。乾かしたあとにはブラッシングを忘れないでください。
肛門腺が原因?
犬を飼っているものの、肛門腺をご存じではない方が意外と多いという話を聞いたことがあります。肛門腺は、肛門を時計の中心に見立てた場合に、4時と8時の方向に対になっています。肛門腺は、犬の祖先が野生動物であったころに、マーキング(動物が自分の縄張りを示すこと)として使ってきました。肛門腺から出る分泌液は個体ごとに、におい、色、量が違います。粘着質な泥状なもの、透明でサラサラしているものもあります。人間の指紋のようなものですね。また、肛門腺から出る分泌液は、独特のきついにおいがします。このにおいを体臭と思われる方もいらっしゃるようです。例えば、散歩などで他の犬とすれ違ったときになどに、初対面の犬と出会うと、お互いのおしりのにおいを嗅いでいる姿をご覧になったことがある方もいると思いますが、これはにおいを通じて相手の情報を得ているのです。
さて、この肛門腺にたまる分泌液ですが、中型~大型犬は排泄物と一緒に体外に排出できるのですが、品種改良を重ねてきたことが原因となり、小型犬や高齢犬は自分では排出できません。肛門腺にたまった分泌液を排出せずに放っておくと、破裂してしまい、治療が必要となります。
肛門腺絞りの方法
肛門腺を絞る方法ですが、犬のしっぽを片方の手で持ち上げます。肛門を時計の文字盤の中央に見立てて、もう片方の手で4時と8時にあたる所を指で押さえます。その際に、ティッシュペーパーなどを間に挟んでください。押さえたところを下から上に絞るように、優しくゆっくりと押し上げると、膿のような分泌液が出てきます。量は個体によって違います。勢いよく飛び出すこともありますので、服に飛び跳ねないように気をつけてください。肛門の周りが柔らかくなれば修了です。その後、肛門の周りをきれいに拭いてあげてください。また、シャンプーの際に肛門腺を絞ってあげれば、汚れとともにきれいに洗い流すことができます。なお、絞ったときに赤色あるいは緑色の場合は炎症や可能の場合もあります。その場合には、動物病院で診てもらいましょう。
肛門腺を絞るタイミングですが、犬が肛門を床にこすりつけているときや、執拗に舐めているときは、肛門腺に分泌液が溜まっている時期です。
肛門腺絞りが難しい場合は、プロに頼みましょう!
何回か肛門腺絞りをすれば慣れてきます。しかし肛門腺も犬によっては絞りにくい場合があります。また犬が痛がったり、嫌がる場合もあります。その場合には無理に肛門腺絞りを行わないで、トリマーさんや動物病院にお願いしましょう。定期的にトリミングしている場合には、トリマーさんがお手入れと一緒に行ってくれるので、安心ですね。
病気の可能性も?!
シャンプーなどを定期的に行っても、犬の体臭がなかなかとれない場合には、病気の可能性もあります。消臭剤で臭いを消せば良いというものではなく、元から絶たなければ解決しません。以下の症状別に解説します。
皮膚がべたつく、フケがでてきるとき
皮膚がベタベタする、あるいは被毛からフケがたくさん出る、皮膚が臭いといった場合には、脂漏症(しろうしょう)の疑いがあります。脂漏症とは、マラセチア菌(カビやきのこと同じ仲間の真菌類)と呼ばれる酵母の一種によって引き起こされる皮膚炎です。マラセチア菌は常在菌で、正常な皮膚にも存在します。しかし、何らかの原因によって、このマラセチア菌が大量に分泌すると、皮膚がベタつく、あるいはフケがたくさん出て酸っぱく油っぽい独特の匂いを発生します。
マラセチア菌は、次の3つの要因によって過剰に増殖します。
1.皮膚や耳の分泌量が増える
2.皮膚の温度が上がる
3.皮膚を掻きむしる、あるいは過剰に舐めることにより皮膚の状態が悪化する
マラセチア菌は、皮脂を栄養分としているため、皮脂分泌の多い犬、あるいは耳垢の多い犬が、何かの皮膚トラブルが発生した際に増殖しやすいのです。マラセチア菌は、犬の年齢にかかわらず発生します。マラセチア菌は皮膚にある皮脂を食べる菌なので、皮脂の多い犬種は注意が必要です。
症状が出やすい箇所は、耳、口、お腹、指の間、肛門など毛が密集していたり、湿気の多い場所です。犬種では、シーズーが多く、他にもテリア、ミニチュアシュナウザー、バセットハウンド、ゴールデンレトリーバー、シェットランドシープドック、ボーダーコリーなどにも多く見られるうです。更に、シワの多いフレンチブルドックやパグなども、シワの間のアカなどが溜まりやすく、マラセチア筋が増殖しやすい犬種です。なお、マラセチア菌は、アトピー性皮膚炎、免疫力が低下している、食物アレルギー体質の犬にマラセチア症が発生しやすいと言われています。
あなたの愛犬が、毛を掻きむしったりするような状態が続く場合には、飼料症の疑いがありますので、早めに獣医師に診ていただきましょう。治療方法は飲み薬によるものですが、アレルギー反応が出る場合には、ステロイド剤を投与することもあります。
マラセチアにかからないように予防するためには、部屋の湿度を抑えるためにエアコンを上手に使って湿度調整を行います。また、脂肪分の多い食事を控える、免疫力を上げるための食事療法、薬用シャンプーの使用など日常のケアが必要です。なお、マラセチア菌は、健康な人間には感染することはありません。
耳が特に臭う場合
耳が特に臭う場合は外耳炎の疑いがあります。外耳炎とは、外耳から鼓膜にかけた部分、外耳道(耳の穴と呼ばれる部分)に起こる感染症のことを言います。外耳炎は湿気、シャワー、入浴、その他の水気の多い場所で耳の穴に異物(細菌)が入ることが原因です。更に、アレルギー疾患、内分泌疾患、感染症なども原因となります。また他にも、寄生虫や耳垢なども原因となります。動物固有の原因として、散歩中に草むらに入ってしまい、耳の中に雑草などがはいって外耳炎を起こすこともあります。
初期症状は、耳が赤くなる、耳が臭う、首を振り続ける、耳を掻くなどです。また後ろ足で首を掻く仕草が多いときにも要注意です。これは耳まで足が届かないために首を掻いてしまうのです。耳が臭う場合には、早めに動物病院で治療を受けてください。そのまま放置しておくと、耳の奥まで症状が進行してしまう恐れがあります。
外耳炎は、ミニチュアダックスフンド、パグ、フレンチブルドック、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、プードル、マルチーズなど、耳が垂れ下がった犬種に多く発症します。
外耳炎の予防は、耳の中が蒸れないようにすることが必要です。耳の中を掃除する、シャンプー後はしっかりと乾かす、耳垢チェックなどです。また、外耳炎は慢性化しやすく、特に梅雨から夏場にかけた湿度の高い時期に発症する傾向が高いと言えます。
口が特に臭う場合
口臭の原因は主に、歯が汚れている事によるものと、内臓疾患によるものがあります。歯が汚れている場合には、歯磨きをすることによって防ぐことができます。歯磨きに関しては、こちらの記事(https://konokototomoni.com/category-discipline/dog-brushing/)に詳しく解説してありますので、ご参考にしてください。
一方、内臓疾患によって口臭がする場合には、腸内環境の悪化が挙げられます。胃腸の調子が悪くなると口臭がひどくなることがあります。また肝不全が原因の場合もあります。肝臓はアンモニアを尿素に変える働きがありますが、肝臓の働きが悪くなることで体内のアンモニアが増えてしまい、口からアンモニア臭がすることがあります。若い犬には少ないのですが、老犬は肝不全の恐れもあります。
他にも腎臓病である場合もあります。腎臓は老廃物を尿にする役割があります。もし病気などで腎臓が機能しなくなると、どんどん体内に老廃物が溜まってしまいます。血液中に溜まった老廃物が肺を通って息と混ざり、口臭がきつくなることがあります。
毎日きちんと歯磨きをしているにもかかわらず、口臭がきつい場合には、上記のような内臓疾患の恐れもありますので、早めに動物病院で診察しましょう。
おうちでできる対策をご紹介!
あなたの可愛い愛犬の体臭が気になるようでしたら、毎日の生活の中でおうちでできる対策方法をご紹介しましょう。
食事が原因と思われる場合
多くの飼い主様は市販のドッグフードを愛犬に与える方が多いと思います。市販のドッグフードだからといって安心してはいけません。中には粗悪な肉を使っている製品もあります。腸内を整える善玉菌が減ってしまい、逆に悪玉菌を増やしてしまう粗悪品もあるのです。特にタンパク質と油脂には注意する必要があります。タンパク質は分解されると硫黄を含むアンモニア、硫化水素、アミンなどに分解されます。また脂質の質が悪いと、毛穴や皮脂腺を詰まらせてしまい、体臭の原因となってしまいます。
粗悪な肉産物や肉粉を使ったドッグフードは、肉以外の内臓や骨などが使われている場合があります。4Dミートと呼ばれる劣悪な肉が使われています。毎日愛犬に与えるドッグフードは、原材料を確認して購入するのはもちろんですが、値段にとらわれずに、自然由来の体に優しいドッグフードを与えるようにしましょう。
添加物不使用なもの、アレルゲンが少ない物を選びましょう
また、ドッグフードに添加物が含まれているものは愛犬に与えないようにしたいものです。添加物は、防腐剤、保存料、発色剤、着色料、着香料を言います。例えば、防腐剤はドッグフードを長持ちさせるため、着色料はドッグフードを鮮やかに見せるためのものです。添加物に関しては、日本では「ペットフード安全法」に、使用上の注意や上限値などが定められています。また、何のために使われているのかがわかるように、その用途も併記することになっています。しかし、愛犬の健康を最優先に考えれば、添加物不使用なドッグフードを与えたいものです。近頃では、アレルギー疾患の犬が増えています。アレルギーの原因となる物質をアレルゲンと言います。食べ物の他に、花粉、ダニ、カビ、化学製品など多岐にわたりますが、リスクが高いのは食物アレルギーです。愛犬に毎日与えているドッグフードですから、低アレルゲンの製品を与えるようにしましょう。ただし、絶対にアレルギーにはならないという食材はありません。新しい食材を与えるときには、わんちゃんの様子をしっかり観察したり、事前に動物病院でアレルギー検査などを行うなどして対策を行うとよいでしょう。
シャンプーとドライヤーで臭い対策
シャンプーが嫌いな子はどうしたら?
シャンプーで清潔を保つことによって体臭を防ぐことはできます。ただし、何度やっても愛犬が嫌がることもあります。こういった場合には、こちらの記事(https://konokototomoni.com/category-discipline/dog-shampoo/)に詳しく解説してありますので、ご参考にしてください。
ドライヤーを嫌がる子には?
シャンプー後のドライヤーの音を怖がる犬もいます。その場合には、ペット用のドライヤーを用意してはいかがでしょうか。ペット用ドライヤーにはスタンドがついているため自立可能です。また飼い主は両手が自由になりますから、愛犬を癒しながら乾かすことができます。
自宅で対策をしても、なかなか治らないときは動物病院へ相談しましょう
これまで、ご自宅でできる範囲内で体臭を抑える方法をお伝えしましたが、それでも体臭が治まらないこともあります。そのときには、早めに動物病院に行って、獣医師とご相談ください。見た目ではわからない内臓疾患に侵されている場合も考えられます。
まとめ
ドッグフードやシャンプーなどの日常生活の中で犬の体臭対策についてお伝えしました。ドッグフードは良質なものを与えること、シャンプー後のドライヤーでは十分に乾かすこと、肛門腺のお手入れなど、飼い主様と愛犬が常にコミュニケーションを取りながら生活すれば、十分に対応できることが多いと思います。それでも体臭が治まらない場合には、病気にかかっていることも考えられますので、早めに獣医師とご相談ください。