犬がお散歩のときに拾い食いをする原因とは?
犬が落ちている食べ物を食べるのは犬の野生本能
犬は野生の頃に外で土がついているものでも食べていたので、床や地面に落ちているものを汚いとは思いません。
そして散歩中に目の前に食べられそうなものが落ちていたら食べてしまうのは、野生の頃の名残です。これは犬の本能で、お腹がすいていなくても食べられそうなものを見つけたらすぐに口に入れてしまいます。
犬が石などを食べるのは心理的要因(飼い主さんの気を引きたい)
犬の本能ではない理由で拾い食いをするときは、犬が飼い主さんの気を引きたいという理由があります。
犬が落ちているものを食べようとした時、飼い主さんが驚いて騒いでしまうことがありますよね。犬にとってはその様子は、自分が落ちているものを食べると飼い主さんが喜んでくれたと見えてしまう場合があるのです。
また、落ちているものを食べたときに、飼い主さんが自分に注目して声をかけてくれると勘違いして拾い食いをすることもあります。
拾い食いするのは犬が飼い主をリーダーと認識していないしつけ不足
飼い主さんがリーダーとして主導権を握らなければならないのですが、しつけが上手くいっていない場合は犬が飼い主さんをリーダーとして認めていないことがあります。
本来であれば、何かを食べる時はリーダーの許可が必要なのですが飼い主さんがリーダーになれていない場合は犬が指示なしに好きな行動をしてしまいます。
散歩中に犬が拾い食いをしたときの危険性
吐く・下痢などの体調不良を起こす
犬が拾い食いすることで、嘔吐や下痢などの体調不良を引き起こすことがあります。外には何が落ちているかわからないので、何を食べて体調不良になったのか分からないと病院で治療するときもすぐに対応することができなくなってしまいます。
また、拾い食いは外だけでなく家の中でも起こります。毒性がなくても異物を飲み込むことで食道や胃、腸に異物がつまり、呼吸困難や腸閉塞を引き起こしてしまうことがあります。
治療として開腹手術を行うことがあり、愛犬の体に大きな負担をかけてしまいます。
たかが拾い食い…と軽視してしまいがちですが、犬の拾い食いは時に深刻な事態を招いてしまう場合もあるのです。
愛犬を守るためにも、犬が拾い食いをしないように注意する必要がありますね。
散歩中に犬が石などを食べて腸閉塞の危険
犬は食事をするとき、口に入れたものをよく噛まずに飲み込んでしまいます。これも野生の名残で他の動物に横取りされないように、素早く食事をする必要があったためです。
外で石などの異物を飲み込んでしまった場合、食道や胃、腸などに詰まる恐れがあります。そうなると腸閉塞を引き起こして開腹手術を行わなければならなくなることもあります。
家の中でも何でも口に入れるクセがついていると、思いがけないものを飲み込んでしまうことがあるので注意しましょう。
拾い食いで寄生虫の危険性も
拾い食いの危険は、寄生虫感染の恐れもあります。他の動物のフンの中に寄生虫の卵があった場合、そのフンを食べてしまうと感染する場合があります。
また、土の中に生息している虫を食べてることで犬が貧血になったり下痢をすることもあります。
中でも「回虫(かいちゅう)」は犬が虫の卵を食べてしまう経口感染でうつります。
回虫は犬の腸内でタンパク質や炭水化物を栄養源として生息します。そのため、犬がご飯を食べても寄生虫に栄養を取られてしまいます。
また、母犬が回虫に感染してしまうと、胎盤を通じてお腹の中の赤ちゃんにも感染したり、母乳を飲んでいる子犬に感染することもあります。
成犬の場合は体調によりますが、回虫が寄生していても症状が出ない場合があります。しかし、子犬の場合は嘔吐や下痢などを引き起こし、ひどくなると貧血や痙攣などの神経症状が出ることがある怖い感染症です。
「鉤虫(こうちゅう)」は犬の小腸の粘膜に咬み付いて血を吸います。
成犬の場合は症状が出ないこともありますが、大量に寄生していると貧血や軟便が続くことがあります。また、子犬が感染すると血便や下痢が続き、脱水や貧血のほか発育不良などの症状を引き起こすことがあります。
このように、成犬だけでなく子犬にも危険が及ぶので拾い食いをやめさせることが大切です。
ケガをする可能性
拾い食いの危険性は下痢や寄生虫だけではありません。
道路には犬にとって危険なものがたくさんあります。食べ終わったチキンの骨が捨てられていた場合、いい匂いに誘われて犬が口にしてしまうかもしれません。
家の中にもビニール袋やラップ、子どものおもちゃなど、犬が口に入れやすい大きさのものが多くあります。
中には飼い主さんの留守中に、スーパーボールを20個も飲み込んでしまった犬もいます。胃の中で留まっていたため内視鏡で取れましたが、腸に詰まったら大変ですよね。
毒物を口にすると死亡することがある
人間が美味しく食べているものでも、犬が食べると中毒を引き起こすものがあります。その代表格としては、チョコレートやネギ類、レーズンなどが挙げられます。
チョコレートは、「テオブロミン」というカカオに含まれる成分が犬にとっては有害となります。また、ネギ類は赤血球が失われる症状が引き起こる恐れがあり、レ-ズンには腎不全を引き起こす恐れがあるので、犬には食べさせないようにしなければなりません。
犬の拾い食いを防止するしつけ方法
犬にしつけをするときは環境を整えることが大切です。
犬の集中力が切れないように窓を閉めてテレビやラジオはつけず、部屋の中を静かにします。そして、気が散らないようにおもちゃも片付けましょう。
犬が集中していられるのは10~15分程度なので、短時間で訓練を行って犬の集中力が切れたらその日は終わりにすることが大切です。
飼い主がリーダーであることを認識させる
犬が拾い食いするのは飼い主さんをリーダーだと思っていない可能性があります。
犬が拾い食いをしないためには、まず基本的なしつけを完璧にすることが大切です。
まず犬が飼い主さんの言うことを聞けるようにするために、「待て」ができるようにしましょう。「待て」をしているとき、犬が飼い主さんの顔を見るようになったらしつけは成功です。
ご飯やおやつを食べる時はリーダーの許可が必要だと犬が認識すると、拾い食いをしなくなります。
また、散歩のときに犬が飼い主さんより前を歩いているのも、飼い主さんをリーダーだと思っていない証拠です。そして、前を歩くことで拾い食いがしやすくなるので、散歩のときは飼い主さんが前を歩き、道を確認しながら歩くようにしましょう。
首輪やリードに慣れさせて拾い食いを
散歩中に気をつけることは、リードを伸ばしたままで歩かないようにすることです。リードを伸ばしたままにすると、犬が自由になれるため拾い食いをする危険があります。
また、拾い食いしたときに犬と離れているとすぐに対応できず、何を口に入れたのか分からないことがあります。散歩のときは飼い主さんがリーダーとして犬をコントロールすることが大切です。
家の中でできる拾い食いしないためのしつけ方
犬が拾い食いしないようにするのは、しつけをする必要があります。これは犬を危険から守る大切なことであり、しつけは犬が人間社会で生きていく上で必要なことです。その方法を詳しく解説していきます。
- はじめは家の中でトレーニング
- 指示語を覚えさせる
- リードをつけずにトライ
- 床に置くおやつの数を増やす
- 床に置くおやつを一番好きなおやつにする
- 部屋でできるようになったら外で行う
拾い食いをしないようにするために、はじめは家の中でしつけを行います。家の中でも首輪とリードをつけて、外での散歩を再現します。
しつけをするために犬が集中できる環境を整え、部屋の中の目立つ場所におやつを1つ置いておきます。部屋の中を散歩するようにリードを短めに持って歩くと、犬がおやつに気づいて食べようと近づくでしょう。
その時、飼い主さんは犬が落ちているおやつを食べさせないようにリードをぐっと引きます。そうすると、犬はおやつが食べられず諦めて飼い主さんのもとに戻ってくるので、犬を思い切り褒めてご褒美を与えます。
ご褒美は床に置いたおやつよりも美味しいもので、犬が一番好きなものにしましょう。そうすると犬は落ちているものを食べなかったことで飼い主さんが褒めてくれて、一番好きなおやつが食べられると学びます。
次に、犬に落ちている食べ物を口にしないで飼い主さんの元に戻ることと、指示語を結びつけるようにトレーニングします。
部屋の中におやつを置いて先ほどと同じようにリードを短く握り、犬がおやつを食べようとしたらリードを強く引きます。犬が諦めて落ちているおやつから離れた瞬間に、飼い主さんが指示語を言います。
他のシーンと紛らわしくさせないよう、落ちているものを諦めて飼い主さんの元に戻るときに言う言葉を決めてください。「ドンタッチ」(Don’t touch!)や「ノータッチ」(No touch!)などがいいでしょう。
犬が落ちているものを諦めて飼い主さんの元に戻ってきたら、「いい子」と頭を撫でながら褒めて美味しいおやつをあげます。
こうすると、犬の頭の中で落ちているものを諦めて戻ることと指示語がだんだん結びつき、トレーニングを重ねることで覚えられるようになります。
犬が指示語を覚えて落ちている食べ物を口にしないようになったら、次はリードを外して挑戦してみましょう。
床におやつを1つ置いて犬を自由に歩かせます。犬が落ちているおやつに鼻を近づけた瞬間、指示語を言います。そのときに犬がおやつを諦めて飼い主さんの元に戻ってきたら成功です。
もし、指示語を言ったのにおやつを食べてしまったら前のステップに戻ってトレーニングを続けます。
ここで注意しなければならないのは、犬が落ちているおやつを食べてしまった時に「あーあ」などとがっかりした顔や態度を見せないことです。毅然とした態度でトレーニングを行うことが重要です。
犬が飼い主さんの発する指示語を理解して、リードなしでも落ちているおやつを食べずに戻ってくるようになったら次の段階へ進みましょう。
次はおやつの数を1つから少しずつ増やしていきます。2つにして成功したら次は3つ、4つと増やしていきます。増やすのは1日1つずつのゆっくりなペースでもいいので、焦らず愛犬のペースに合わせて進めていきましょう。
家の中で行うトレーニングの最終段階です。
たくさんのおやつが落ちている状況で拾い食いをしなくなったら、最後は愛犬が一番好きなおやつを床に置いてみましょう。ここで指示語に反応して飼い主さんの元に戻ってきたら部屋の中でのトレーニングは成功です。
部屋の中でのトレーニングが終わったら次は外でのトレーニングです。外にはたくさんのものが落ちていて、騒音も多いため指示語を出す時は普段より大きな声を出すように気をつけましょう。そして、犬が飼い主さんの指示をちゃんと聞いて拾い食いしなかったらもう大丈夫。愛犬をたくさん褒めてあげましょう。
ガムやおもちゃを咥えさせて散歩する
犬の拾い食い防止に、犬用のガムやおもちゃを咥えさせたまま散歩する方法があります。お気に入りのおもちゃを咥えたまま散歩に出かければ、落とさないように口を開けないので拾い食い防止に効果的です。
しつけしても治らない場合は口輪などの拾い食い防止グッズを使用する
犬の拾い食いはしっかりしつけて治すことが大切です。
しかし拾い食いが癖になっていて、なかなか治らない場合は犬用のマズル(口輪)を使用するといいでしょう。
口輪とは、犬の口が大きく開かないように犬の口にかぶせるものです。アヒルのくちばしのような形をしたユニークなものや、マジックテープで調整できる布製のものがあります。口輪はしつけられないから使うのではなく、しつけと平行しながら使用しましょう。
もし犬が拾い食いしてしまったら?
犬が唸ることがあっても動じずに速やかに吐かせる
犬が拾い食いしたとき、決して怒鳴ったり叩いたりしてはいけません。怒鳴ってやめさせようとしても犬は恐怖心を感じるだけです。
しつけの方法でご紹介したように、拾い食いをしたときは「ドンタッチ」などの指示語で落ちているものを口に入れないようにします。
しつけの途中段階で、落ちているものを口にしてしまったら無理やり取るのはやめましょう。犬の本能で、獲物を取られると勘違いして慌てて飲み込んでしまう恐れがあるからです。飼い主さんが焦らず毅然とした態度で声がけを行いましょう。
血便などの症状が出たらすぐに動物病院へ
犬が拾い食いをして、体調を崩したらすぐに動物病院へ連れて行くことをおすすめします。血便や下痢、嘔吐などを繰り返すようでしたら迷わずに病院へ行きましょう。中毒だった場合、速やかに処置しないと手遅れになることがあります。
愛犬の命を守るために拾い食い防止のためのしつけが大事!
犬の拾い食いを防ぐためには、しつけを行うことが一番大切です。普段から犬が飼い主さんをリーダーと認識し、言うことを聞くようにしておくのは犬のためにも大事なことです。散歩中に知らな人に吠えたり、遊びたくて飛びかかったりすると思わぬ事故に繋がる恐れがあります。
しつけをしっかりした上で、散歩コースを見直すのも愛犬のためになります。公園のベンチやコンビニエンスストアの近くには食べ物が落ちていることが多く、衛生的にもいいとはいえません。整備された道があれば犬も飼い主さんもお互いに気持ちよく散歩できます。
愛犬の命を守るのは飼い主さんの重要な役目です。拾い食いに関してはしつけが重要なので、しつけに自信がない場合はプロのトレーナーの力を借りましょう。飼い主さんが自信たっぷりに威厳を持ってしつけを行うことが大切です。