犬が飼い主さんと遊んでいるときに甘噛みをしてくることはありませんか?子犬のときの甘噛みは力が弱いため、じゃれているようで可愛いと感じますが、成犬になってから甘噛みすると力もついてくるため危険なときもあります。この記事では犬が甘噛みする理由と、しつけ方法についてご紹介いたします。
成犬が甘噛みする4つの理由
動くものに対する狩猟本能
犬が甘噛みする理由に、野生の狩猟本能が残っていることが挙げられます。
野生のころに狩りをしていた犬は動くものに噛み付き、捕らえようとする本能があります。この名残が今でも残っているので、よく動く人間の手足に反応して甘噛みすることがあるのです。
ストレスを発散している
犬でもストレスを感じるとイライラして攻撃的になります。そのストレスを発散するために、吠えたり噛んだりすることがあります。また、退屈で暇を持て余しているときに何かを噛んでしまうこともあります。
運動量が足りない、留守番の時間が長過ぎるなどストレスの原因はさまざまですが、飼い主さんの手足を甘噛みしてくるのはストレスが原因である場合があります。
上下関係を確認している
犬は群れで暮らしていた動物なので上下関係が存在します。
人間と暮らすようになってからも犬は家族の中で順位をつけています。まだ家族の中で順位をつけらていない犬の場合、飼い主さんを甘噛みして自分より強いかどうかを確認しているのです。
犬が甘噛みしたとき、飼い主さんが叱らずに許していると自分より弱い立場で「下位」であると見なす可能性があります。
飼い主さんの手や足を噛んで反応を楽しんでいる
犬が甘噛みしてきたとき、飼い主さんが「痛い!」と声を出して騒ぐことで、犬は飼い主さんが喜んで遊んでくれているものだと勘違いします。
甘噛みをするたびに「こら~。だめよ」などと軽く声をかけるだけだと、相手をしてくれていると思い込み、飼い主さんの反応を楽しむために甘噛みしてくるようになります。
子犬が甘噛みする2つの理由
赤ちゃんのときは歯の生え変わり時期で歯茎がかゆい
犬種によって異なりますが、犬の歯は生後3ヶ月~6ヶ月頃に乳歯から永久歯に生え変わります。歯が生え変わる時、口の中が痒くて何かを噛んで解消しようと甘噛みすることがあります。
子犬が飼い主さんの手やものに噛み付いたら、歯の生え変わりではないかと考えてみましょう。
遊びの延長で力加減を学んでいる
犬は子犬のときに兄弟同士でじゃれ合って、遊びの中で噛む力加減を学んでいきます。また、自分が強く噛まれることで「強く噛むと痛い」ことを学びます。
しかし、子犬のときに犬同士で充分に遊んでいないと飼い主さんにこの行動をしてしまいます。犬同士の場合は噛んで噛まれて加減を学びますが、人間が相手だと自分が噛まれることがないので加減を知らずに甘噛みを続けてしまうのです。
犬の甘噛みが治らないのは飼い主さんに原因がある!?
子犬のときから甘やかして飼い主さんがリーダーになれていない
犬の甘噛みは飼い主さんが原因であることが多いのですが、それはどういったことなのでしょうか。
一番問題なのは、犬が成長する段階でやっていいことといけないことを教えていないことです。
子犬のうちは何をやっても可愛いので、ついついしつけをしないで許してしまいがちですが、そうなると子犬は人の手を噛んでも叱られないと勘違いしてしまいます。
また、犬が甘噛みしてもしつけを行なわないと、犬は噛んでも怒らない飼い主さんは自分より弱い存在で自分の方が上の立場だと思い、しつけがうまくいきません。
人間の手足で遊ばせていた
犬が人の手や足を甘噛みするのは前述した通りですが、その際に飼い主さんがしつけを行わずそのままにしていたため、犬は飼い主さんの手足を噛んでもいいのだと思ってしまうのです。そして、そのまま今でも甘噛みを続けてしまいます。
甘噛みされたときに叱らないで「痛い!」と騒ぐから
犬が飼い主さんの手や足を甘噛みしたとき、「痛い」などと言って手をさっと引っ込めてはいませんか?また、「こら、〇〇〇!」などと大きな声で犬の名前を呼んでいる飼い主さんもいるでしょう。
飼い主さんが毅然とした態度でしつけないと、犬は飼い主さんが遊んでくれていると勘違いしてしまいます。
犬に甘噛みをやめさせるべき2つの理由
成犬になったとき甘噛みで思わぬ事故につながる
犬が甘噛みするのは自然なことで、子犬の時は歯が痒くて噛むことがありますし、家庭の中で上下関係を確認するために行うこともあります。
そのときに、甘噛みを許してしまっていたら、犬自身が噛む強さの加減を学べずに成犬になってからも強く噛んでしまう恐れが出てきます。
飼い主さんと遊んでいるときや散歩中に他の犬とじゃれたとき、甘噛みのつもりが強く噛んでしまい、ケガをさせてしまうこともあるので、甘噛みしないように必ずしつけをしましょう。
犬に甘噛された傷から病気に感染する恐れがある
甘噛みされたとき、噛まれた場所がミミズ腫れのようになってしまうことがありますが、これは犬の口の中の菌が原因です。
犬の口の中には「パスツレラ菌」や「ブドウ球菌」がいて、人の手や足を噛んだときに傷口から菌が入り込み、ひどくなると化膿して腫れることもあります。また、破傷風の菌がいる場合もあるので注意が必要です。
飼い犬のほとんどは予防注射を受けているので、それほど心配はないですが、他の菌が体内に入ってくる可能性もあるので犬にしつけをして噛まないようにしなければなりません。
犬に噛まれた傷が長い間治らない場合はアレルギーを疑いましょう。そして、噛まれたところがなかなか治らない場合や悪化するようなときは、すぐに病院へ行きましょう。
犬の甘噛みを直す正しいしつけの方法
人の手足で遊ばせない
犬の甘噛みを直すために大切なことは、人の手足を噛んで遊ばせないことです。
手足を噛んだらすぐに低い声で「ダメ」と、短く注意をしましょう。何回注意をしてもやめないようなら、やめるまで無視をします。かわいそうに思いますが、散歩中などに飼い主さん以外の人を噛んでしまったら大変なことになります。それを防ぐためにも、まずは飼い主さんの意識を変える必要があります。
おもちゃを与えて噛んでいいものとだめなものを教える
犬の甘噛みは本能ですが、飼い主の義務として噛んでもいいものとだめなものがあることを教える必要があります。
最初、犬は噛んでいいものとだめなものを見分けることができないので、手や足を噛もうとしたらおもちゃを与えましょう。その際、誤飲につながるおもちゃは避けて安全なものを選んであげましょう。
甘噛みされたら毅然とした態度で犬を叱る
犬が甘噛みしてきたときに、「もうだめだよ~」などと甘い叱り方をしていては、犬に遊びと勘違いさせてしまいます。甘噛みを許している段階で、飼い主さんは自分よりも下位だと思わせてしまうことになるので、しつけがスムーズにできなくなってしまいます。
犬が甘噛みしてきたら、低い声で「だめ」や「NO」などの短い言葉で叱ります。犬は、高い声で話しかけられると褒められていると感じやすいので低い声を出す
意外と知らない愛犬への間違ったしつけ方を知っておく
犬をしつけるとき、やってはいけないことのひとつに「暴力」があります。人間と同じように、犬を叩いても恐怖心を与えて信頼関係を壊すだけなので絶対にやめましょう。
また、怒鳴るのも厳禁です。大声で犬の名前を呼ぶと、犬は名前を呼ばれると嫌なことがあると思ってしまうので、叱るときは名前を呼ばないようにしましょう。
犬をしつけるとき、犬の顔を両手で押さえて自分の顔を近づけて叱る飼い主さんは多いようですが、この叱り方は正しいとはいえません。
この行動は犬にとって威嚇されているという意味に捉えられ、怖い思いをさせるだけです。また犬を仰向けにして叱ると飼い主さんのことをリーダーだと分かり、言うことを聞くようになるという話がありますが、この方法も犬を押さえつけて怖い思いをさせるだけで、しつけの仕方としては意味はありません。犬が飼い主さんの行動を怖がって、恐怖心から甘噛みをしてくることもあるので注意しましょう。
甘噛みをしてきた犬の鼻先を叩いたり、口を閉じさせて手で押さえつけるなどの行為は犬に恐怖を与えるだけです。怖い思いをすると飼い主さんのことを信頼しなくなってしまうので、絶対にやめましょう。
噛むのをやめさせるために、犬の口の中に手を入れるのも犬にとっては苦しいだけです。人の手を怖がるようになってしまったら、しつけや世話をするときに思うようにできなくなります。また、人間の手は怖いことをするものだと認識させてしまうと、動物病院での診察や予防接種などのときに暴れるようになってしまう場合もあります。
犬が甘噛みしてきたときにあまり痛くないから叱らない、痛いときだけ叱るというようにムラがあるしつけをしていると犬が混乱します。噛む強さに関わらず、甘噛みをしてきたら叱るというように一貫性を持ってしつけをしましょう。
甘噛みしないようにするためには、一緒に暮らしている家族全員が同じようにしつけなければなりません。人によって違う接し方をすると犬が混乱してしまいます。
また、家族に小さな子どもがいる場合、子どもは犬に甘噛みされると大声を出したり逃げ回ったりするでしょう。そうすると、犬は子どもに遊んでもらっていると勘違いしてしまうので注意しましょう。
前述しましたが、甘噛みされたときに声を出したり手を急に引っ込めたりすると、犬は飼い主さんに遊んでもらっていると思い、甘噛みをやめません。
そうならないように、犬が甘噛みしてきたら遊ぶのをやめて無視しましょう。手を後ろに組むなどして、犬に噛ませないようにします。すると噛んだら遊んでもらえなくなることを学習して噛まなくなっていきます。
犬のストレスを取り除く
甘噛みをしてくる理由がストレスの場合、どのようなことが原因でストレスになっているのかを考えましょう。
散歩の時間や回数は足りているか、寂しい思いをさせていないかなど犬にとって何か変化はなかったかを考えてみましょう。
ストレスを抱えているのに、叱ってしつけようとしてもかえって犬を追いこむことになり、甘噛みが治らないことがあります。ストレスの原因を取り除くようにしてあげるとだんだんと甘噛みをしなくなるでしょう。
歯のかゆみによる犬の甘噛みにはおもちゃやガムを与える
歯の抜け変わりのときに違和感や痒みを感じて甘噛みしているときは、痒みを紛らわすために硬いおもちゃや歯磨き用のガムを与えましょう。
おもちゃを選ぶときは噛みちぎって誤食しないような物にしましょう。また、歯磨き用のガムも大きさを誤ると丸呑みしてしまい、喉に詰まらせたり腸閉塞の恐れがあるので充分注意しましょう。
愛犬の甘噛みが治らないときはプロの手を借りてしつけるのも一つの手
犬の甘噛みを直すための方法をいくつか解説してきましたが、犬が甘噛みする理由を理解してその理由に合わせたしつけをしましょう。
犬の甘噛みをやめさせるには飼い主さんの努力が必要です。どうしてもしつけが上手くいかないときは、プロのトレーナーにしつけの方法を教えてもらいましょう。
犬が人間と暮らしていく中で、しつけはとても重要です。だめなものはだめと教えることで犬はいろいろな場所へ出かけることができるようになります。愛犬との暮らしを豊かなものにするためにも、犬が甘噛みしないようにしっかりしつけましょう。