はじめに
わたしは先代犬を2020年に亡くしました。
下痢をしているにも関わらず水分を摂らなくなったことを心配しているとき、友人に「水分は果物や野菜からも摂れる」と教えてもらったことは、当時の私にとっては目から鱗でした。
それから、少しでも体調が良くなればと工夫し、表情や毛艶、触ってみた感じ、うんちの具合など自分自身でよく観るようになりました。
数ヶ月後、彼女は亡くなってしまうのですが、亡くなるまでの間、おそらく初めて愛犬を’観る’ことができました。
それまではどこかで悩みごとや不調を治してくれるのは獣医さんだと思っていたのです。
もっとできることがあったのではないかという後悔も無論あるのですが、自分の目で観て感じ、できるところを工夫するというように、自分ごととして捉えるチャンスを先代犬が与えてくれ、看取らせてもらうことができました。
それらの体験を通して、わんちゃんのことを学びたいと強く思い、理学療法や食事療法、整体や脈診などを学び始めました。
ですので、私は今も獣医師ではありません。この記事を読んでくださっている皆さまと同じ愛犬家の1人です。
この記事も小難しいことではなく、わたしが学びの途中で感じたことや飼い主として日々自分のわんちゃんにしたいと感じている目線で書かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
第一弾は、私がわんちゃんのことを学ぶ中で「ほぐさずにはいられない」と感じたことをみなさんにお伝えさせてください。
わんちゃんと人との身体構造の違い
わんちゃんと人との身体の構造について何が違いますか?と聞かれたら、何と応えますか?「人は二足歩行で、わんちゃんは四足歩行」という答えが多いのかなと思います。確かに、人は二足直立で歩き、わんちゃんは四足で歩いているので正しい回答ですよね。
では、二足と四足で何がそんなに違うのかを知るために、まずは、わんちゃんと人と同じところから考えてみましょう。
実は結構いっぱいあります。
人もわんちゃんも同じ脊椎動物であり哺乳類なので、無脊椎動物の昆虫、あるいは同じ脊椎動物ではありますが、哺乳類ではない魚と比べれば、それほど遠い存在ではありません。
身体の構造に注目してみると、犬の前肢(人は上肢)の骨格は、肩·上腕·肘·前腕·手首·手で、後肢(人は下肢)は臀部(お尻の部分)·大腿(太ももの部分)·膝·下腿(すねの部分)·足首、足で構成されていて同じです。
また、関節の数も、前肢に肩関節·肘関節·手首の3つ、後肢に股関節·膝関節·足首の3つと、同じ数があります。
人もわんちゃんも消化器官や呼吸器官や中枢神経や末梢神経の神経系などで構成されていて、能力は異なりますが同じ機能を持っています。
大雑把に言うと、人は縦にブロックを積み上げるように構成されているのに対し、犬は横に連なっています。
では、いったい二足歩行の人と四足歩行のわんちゃんとで何がそんなに違ってくるのかを考えていきましょう。
わたしがわんちゃんの勉強を始めて、まずびっくりしたのは、わんちゃんはつま先立ちで歩いているということでした。
それまでは、赤ちゃんがハイハイで歩くときのように手のひら全体を地面につけていると思っていたのです。
前肢だけでなく後肢もつま先立ちになっており、足の裏全体は地面についていません。手首(手根関節)や足首(足根関節)は宙に浮いている状態で地面に降ろさず、指の部分だけを地面につけて歩き、身体を支えています。これはかなり辛そうですよね?
次に、わんちゃんの姿勢に注目してみましょう。
人は直立していて、2本の足が身体を支えています。
わんちゃんは四足で立っていますが、直立はしておらず、前肢も後肢を微妙に曲げて立っています。
毛が長いわんちゃんはパッと見た目では分かりづらいかもしれませんので、愛犬の手足を触ってみてください。
膝も肘も程よく曲がっていることがわかると思います。前肢は腕立て伏せ途中くらい、後肢は空気椅子状態で立っています。
微妙な曲げ具合で関節がついているので、長時間立ち続けることはしんどいです。もし、私たちも誰かに「空気椅子で10分間立っていて」と言われたら、やる前から泣きそうになりませんか?
振り返ってみると、長時間ただ立っているわんちゃんはそうそういないと思います。
何もなければすぐに座ったり、横になったりしますよね。もしかしたら、立ちっぱなしの姿勢で居続けるのはしんどいので、身体を休めているのかもしれません。
3つ目は、人は頭が肩の上に乗っていますが、わんちゃんは肩から斜めの角度で首が伸びていて、重い頭を支えているということです。
言うなれば、応援団長が旗を同じ角度で支えている状態です。このことだけでも首周りや肩周りも相当な負荷が常にあると言えます。そして、骨格構造上人と大きく違うところは、わんちゃんには鎖骨がありません。
人は鎖骨があるおかげで肩甲骨を支え肩を安定させてていますが、犬にはありません。では、どうやって肩甲骨が外れてないように支えているのかというと、筋肉で体幹部にくっつけているのです。四足動物であるわんちゃんは、当然前足でも体重を支えていますが、その比重は5対5ではなく、前側に7割、後側に3割と前脚荷重なのです。
首を斜めに持ち上げているということ、鎖骨はなく筋肉のみで肩甲骨をつなげているということに加え前足荷重で立っているということなどから、肩周り首周りも凝りやすい場所なのです。
わんちゃんは走ったり活動的に動いていなくても、普通に歩いているだけ、あるいはただ立っているだけでも負荷がかかる体勢をとっていることがお分かりいただけたでしょうか?
柔軟性の大切さ
では、前肢や後肢、首周りなどが凝ってくると何が問題になってくるのでしょうか。
例えば、肩こりがひどくなると、前肢が動かしづらいので可動域が狭くなり、首を上下に振って歩くことがあります。
首を引っ張りあげる勢いを利用して腕を前に出そうとするためです。頭が足を動かす度に振れるので視界もぶれてしまい、凝りからの痛みも相まって、イライラしたり、神経質になったり、あるいは気分が落ち込んだりするでしょう。
肩周りは性格や気質も現れやすいところで、神経質だったり繊細だったり、怒りっぽい子はいつも肩に力を入れていることになります。
人も肩の力を抜いてイライラすることはできないと思いますが、わんちゃんも一緒です。性格からくる肩への凝りも柔軟さの妨げになります。
よく使う筋肉はコリます。よく使うというのは、歩く走るなど自らの意思で使う筋肉もですが、首を上に持ち上げる·維持するという意識せずに使っている筋肉も含みます。筋肉が凝ると、伸びにくくなります。伸びにくくなるということは可動域が狭まるということなので、身体が動かしづらくなるのです。
ですから、使うところ、負荷がかかっているところこそ、柔軟性を均等に保つことはとても大事になってきます。
日々取り入れたい手軽なマッサージで身体を動かしやすく
1.首のマッサージ
肩周りは、頭を支え、体重の約7割を支えている場所でいつも負担がかかっています。
首の付け根あたりから肩甲骨くらいまでを両横から挟むようにしてゆっくりマッサージしてあげてください。
1、2分を目安で良いですが、最初よりほぐれてきたなという感じがあれば大丈夫です。
初めての時はほぐれたかどうか変化が分かりづらいかもしれませんが、そのうち感じられるようになります。
2.肩甲骨のマッサージ
肩甲骨の上の筋肉をほぐしてあげることも有効的です。
肩甲骨はヘラのような形をしていますが、その真ん中に突起が感じられると思います。
小型犬でしたら、親指と人差し指でその突起(肩甲棘)を挟みマッサージしてあげてください。
大きいわんちゃんは、肩甲棘に向かって押してあげるといいでしょう。
頭側から肩甲棘に向かって擦るようにマッサージし、今度はお尻側から肩甲棘に向かってマッサージするイメージです。
3.太もものマッサージ
ももの外側を親指でこするようにマッサージしてください。
ここは敏感で触られるのを嫌がる子もいるので、首周りや肩甲骨などよりも更に意識して力を抜き、埃を払うくらいの軽さで触ってあげる方が良いです。
まとめ
人も同じですが、わんちゃんも生きていれば乾燥·血行不良が進み、柔軟さが失われていきます。
お散歩は、筋肉·骨·神経機能を鍛えるとても簡単な方法です。積極的にわんちゃんと散歩に行き、しっかりほぐしましょう。
シニアのわんちゃん、お散歩が極度に苦手なわんちゃんは、室内でできる遊びやエクササイズやボディーワークなどを取り入れるといいですね。
マッサージは、上記3つが一度に全部できなくても構いませんし、順番もありません。
愛犬が近くに来たときになでなでする感覚で、マッサージを上手に取り入れてください。