犬の食事は一日2回と一般的に言われていますが、実はこの回数には科学的な根拠はありません。人間と共生する中で、人間の生活リズムをもとに決められた回数です。でも子犬の早期親離れや高齢化、長時間の留守番生活などを踏まえ考えると、食事の回数は必ずしも2回ではなく、見直しが必要なケースもあります。ここでは愛犬の食事回数について考えてみましょう。
ライフステージ別 食事回数
犬の食事回数は一般的に子犬期と成犬期とで区分されています。この区分の基本的なルールを把握し、愛犬の体に適した食事回数をとってあげましょう。
子犬(パピー)の食事回数
離乳を終えた生後2か月~一年未満の子犬の食事回数は3~5回が目安になります。
基本的には朝昼晩ですが、中には食が細く一度に必要量を食べることができない場合もあるので、子犬の食欲に応じて回数を調整します。
この時期は、食事の回数よりも一日の必要量を完食できているかどうかがより重要です。
例えば一日の給与量の目安が300gの場合、
・100gずつ3回(朝昼晩)に分ける
・60gずつ5回(朝、間食、昼、間食、晩)に分ける
食が細い場合はさらに細かく一回量を分け、食事回数を増やし与えます。
大抵の場合は成長と共に運動量が増え始めると、食欲が増し一回に食べることのできる食事量が自然と増え、3回程度に落ち着きます。
ただあまりに食が細い場合、食事の間隔があきすぎてしまい低血糖を起こす場合があるので、愛犬の食欲、発育状態を見極めつつ食事回数を考えてあげましょう。
成犬の食事回数
成犬は大抵の場合、朝夕2回の食事です。この回数は飼い主の生活リズムに合わせ決められています。ただ犬の食事は必ずしも朝夕に限らないので、昼と夜という2回でも問題はありません。
食事のタイミングは散歩や運動の後、一休みしてからが原則です。
ドライフードは摂取後、胃腸内で水分を吸収し数倍にも膨張します。そのため、摂取後すぐに散歩や運動に連れだすと腹痛や腸ねん転というトラブルが起き大変危険です。
必ずこの順番を守るよう心掛けておきましょう。
食事を与えるタイミングは、飼い主が食事をするタイミングと同時という方が大半でしょう。しかしもし愛犬が終日留守番をして過ごすという場合は、飼い主が家を出る直前に与えるという方法もあります。
この方法なら留守番のストレスを多少なりとも軽減し、ごまかすことができます。飼い主が出発する際の愛犬の後追いや無駄吠えが気になる場合におすすめの方法です。
ただこの方法は食欲が旺盛で健康な場合に限り有効です。
・持病がある
・食欲にムラがある
・服薬が必要
という場合は飼い主が日々の食事量を把握する必要があるので必ず目が届くタイミングで与えましょう。
老犬(シニア)の食事回数
犬も高齢になると胃腸機能が低下します。若く健康な頃は問題の無かった食生活も高齢になると消化不良、嘔吐、下痢などの問題が目立つようになります。
特にドライフードが胃腸内で膨張することは胃の不快感や負担につながり老犬にはつらいものです。
このような問題を解消するためには
・食事を小分けにして回数をふやす
・ドライフードはふやかしてから与える
という方法がおすすめです。
高齢になると食欲にもムラが出やすくなり、必ずしも毎日一定量を完食できないものです。愛犬の状態に合わせて食事の回数や内容を見直してあげましょう。
食事回数は1日1回でも良いの?
犬の食事回数は生態学上は1回でも問題はありません。犬は本来野生の環境で暮らせるように体ができています。
野生の環境下では
・毎日獲物が手に入らないこと
・一日に一度しか獲物が手に入らないこと
・満腹になる量の獲物が手に入らないこと
も当たり前です。この生態から考えると、一日一回でも問題がないといえるでしょう。
ただ市販のドライフードは摂取後胃腸内で水分を吸収し数倍に膨らみます。一日の必要量を一度に与えると、膨張した時の量は相当なものです。この全てを消化吸収し終わるまで愛犬を静かに安静に過ごさせる事はなかなか難しいので、必ずしも理想的な方法とは言えません。
ただ一日一食というスタイルは警察犬や災害救助犬など特殊使役を担う犬には多く取り入れられている習慣です。
この背景にはいつ出動の機会があっても対応できるように、腸ねん転などのトラブルを予防するためです。
家庭で暮らすペットの場合、食事も家族との大切なコミュニケーションの手段なので、無理のない範囲で回数を決めてあげましょう。
食が細い子も、通常の回数で良いの?
犬の中には驚くほどに食が細いタイプもいます。この場合、必ずしも2回、3回と通常のルールが通用するものではありません。食事の回数や内容は愛犬の状態をみつつ調整してあげましょう。
中には器ではなく、知育玩具にドッグフードを詰め与える方法であれば遊びながら完食できるというタイプもいるので、与え方もふくめ工夫をしてあげましょう。
食事の回数の減らし方は?
生後一年を迎えたころから、食事の回数を減らすよう調整する時期に入ります。ただ愛犬にとってはこのタイミングや理由が理解できません。そのためいつもの食事時間になると催促をしたり、そわそわすることもあるでしょう。
愛犬に過度なストレスを与えずに食事の回数を変更する方法をご説明させていただきます。
減らし方のポイント
子犬の頃、家族に迎え入れられた当初から食事は一日3回、5回というリズムで生活をしている場合、今後もずっとこの生活が続くと犬は理解しています。
そのため、ある日突然昼ご飯がもらえなくなったとなれば当然不安やストレスを感じます。中には家中、食べものを探し歩きまわることもあるでしょう。
食事の回数を減らす場合は、それまで食事のタイミングとして過ごしていた時間に別の指示を出してあげましょう。
例えば
・短時間の散歩に連れだす
・庭に出し遊ばせる
・オヤツを与える
などです。
あらかじめ愛犬の食器を見えない場所に隠しておくことも効果的な方法です。もちろん最初の数日は愛犬も戸惑いをみせますが、次第に状況が理解できるようになります。
ただ飼い主が常に在宅をしている、食事回数は3回でも負担に感じないという場合は敢えて減らす必要はありません。
まとめ
犬の食事回数は人間との生活をもとに常識化されたルールにすぎません。飼い主の生活スタイルが多様化したり、犬の高齢化が進む中では、愛犬にとってベストであることを最重要視して食事回数を調整してあげるとよいでしょう。