犬も人間と同じように、加齢にともなう体の変化が見られるようになります。
食欲が落ちるのもそのひとつですが、愛犬が急にご飯を食べなくなると飼い主さんは心配ですよね。
この記事では、老犬が食欲不振に陥ってしまう原因と食欲がないときにおすすめの食べさせ方をご紹介します。
年齢にあわせた食事ケアで、愛犬の健康を守っていきましょう。
1.老犬(シニア犬)がご飯を食べない原因は?
はじめに、老犬(シニア犬)が食欲不振を引き起こす原因についてお伝えします。
1-1.味覚や嗅覚が低下している
犬の老化現象のひとつに、味覚や嗅覚の低下が挙げられます。
感覚機能の衰えによって食べ物の匂いや味が脳に伝わりづらくなり、おいしさを判断できなくなることが食欲低下の原因です。
老犬の目の前で食事を出しても食べない場合は、食べ物自体を認識できていない可能性が考えられます。
1-2.消化機能や基礎代謝が低下している
老化によって、消化機能や基礎代謝が落ちることも、食欲不振を引き起こす大きな原因です。
消化吸収に時間が必要になるため、食べ物が消化器官の負担となり、食欲が減少します。
また、老犬期に入ると成犬期のころに比べて運動量が落ちてしまうものです。
体内のエネルギーが消費されず、お腹が空きにくくなっていることも考えられます。
1-3.歯や歯茎にトラブルがある
老犬になると、歯や歯茎にもトラブルが生じやすくなります。
具体的には歯茎が縮んだり、歯周病によって歯が抜け落ちたりして、食事のときに痛みや噛みづらさを感じている可能性があります。
1-4.筋力や関節機能が低下している
犬も年をとるにつれて、筋力や関節機能が低下していきます。
足腰が弱ってくると食事中の姿勢を保つことが難しくなり、体に負担となってしまいます。
とくに犬が前かがみで食事をする体勢は、重たい頭を首の筋肉で支えなければならないので、老犬にとってはつらいものです。
首をかばうために、関節に余計な負担がかかることもあります。
さらに、あごの筋力や飲み込む力も弱ってくるため、食べることが億劫になってしまいます。
1-5.ストレスを感じている
老犬になると体の衰えだけでなく、精神面にも不調が起こりやすくなります。
変化に敏感な犬はとくにその傾向が強く、何らかのストレスからご飯を食べなくなることがあります。
室外犬のなかには、気圧の変化によってお腹の調子が悪くなる老犬もいるほどです。
2.老犬の食欲がないときはどうしたらいい?シニア犬におすすめの食べさせ方
老犬が今まで食べていたフードを食べなくなったら、飼い主さんが食事の与え方にひと工夫入れてあげましょう。
ここでは、シニア犬の食欲がないときにおすすめの食べさせ方を5つご紹介します。
2-1.ドッグフードの香りを強くする
愛犬の味覚や嗅覚が鈍くなっていると感じたら、ドッグフードを温めるのが効果的です。
ドッグフードを温めると香りが強くなるため、老犬の食欲を刺激でき、食べ物を認識しやすくなります。
【老犬におすすめの温め方】
・電子レンジ、湯せんなどでフードの香りを引き立たせる
・温めたスープにドライフードを混ぜる
フードを温めたときは、犬がやけどをしないように熱さを確かめてから与えるようにしましょう。
食事を毎回温めるのが難しい場合は、香り自体が強い食材を取り入れるのもおすすめ。
とくにチーズ類、肉類(高タンパク質)、かつお節は、老犬でも匂いを感じられやすい食材です。
2-2.一度の食事量を少なくする
老犬の場合、一度に食べる量を少なくすることで、内臓への負担を減らす効果があります。
愛犬の様子を見ながら、3〜4回に分けて食事を与えるようにしましょう。
一日の給餌量が適正範囲内であれば、食事の回数が増えても問題ありません。
2-3.ご飯を柔らかくする
消化機能が低下していたり、口内トラブルがあったりする老犬は、ご飯を柔らかくして与えるのがおすすめです。
ドッグフードに白湯やだし汁、スープなどを混ぜあわせることで、飲み込みやすくなります。
手作りご飯の場合は、食材を細かく切り、水分を多めに煮込んであげるといいでしょう。
ふやかすことで同時に水分補給もできるので、脱水症状をふせぐ効果も得られますよ。
2-4.食器の位置を高くする
老犬がご飯を食べづらそうにしていたら、食器の位置を高くしてあげましょう。
食器台や、角度調整ができるフードボウルの使用がおすすめです。
老犬が食事をするときに楽な姿勢は、両手足で立ったときに首が少し下がる程度にしてあげましょう。
体の大きさにもよりますが、肩の高さを目安に食器を配置してください。
食事中の体勢が楽になると、首や足腰の筋肉・関節の負担を減らすことができます。
2-5.マッサージでリラックスさせる
犬もわたしたち人間と同じように、ストレス状態が続くと、食欲が湧きづらくなります。
そのようなときは、老犬がリラックスできる環境を整えてあげることが大切です。
軽い散歩を増やしたり、飼い主さんが体に触れてマッサージしてあげたりするといいでしょう。
血行がよくなることでストレスが軽減し、食べる気持ちもきっと湧いてくるはずですよ。
【老犬におすすめのマッサージ】
①頭からしっぽに向かって、手のひらで包むように優しく揉む。
②つま先から足の付け根にかけて筋肉をほぐすようにさする。嫌がらないワンちゃんは爪を指で軽くつまんであげる。
③両手で顔を包み、目の下から耳にかけて親指でさする。
④足首を優しく持ちあげて、ゆっくりと関節の曲げ伸ばしをする。
3.【要注意】こんなときはすぐに動物病院へ!
食欲不振のほかにも、愛犬の体に異変を感じたときは早めに動物病院で受診しましょう。
ここでは、注意しておきたい症状を解説します。
3-1.食欲不振のほかに症状がある
食欲不振のほかに下記の症状が見られるときは、病気の可能性が考えられます。
【老犬が注意したい症状】
- 元気がない
- ふらふらしている
- 動こうとしない
- 嘔吐や下痢がある
- 多飲多尿をくり返す
- お腹をさわると嫌がる
- 呼吸が荒い、吠える など
病気の進行を防ぐためには、飼い主さんが普段から愛犬の様子を観察し、変化に気づいてあげることが大切です。
動物病院で受診する際は、いつから異変が起きているか医師に伝えるようにしましょう。
適切な診断を受けることによって、愛犬にあわせた治療や食事のケアができるようになります。
3-2.ご飯を食べない状態が続く
老犬が1日以上食事を取らない場合は、注意が必要です。
体の栄養が不足している状態ですので、さまざまな病気につながりやすくなります。
なかでも注意したいのは『胃潰瘍(いかいよう)』と『低血糖症』です。
【胃潰瘍】
胃潰瘍は、食事を取らないことで胃酸が過剰に分泌されて、胃の炎症が起きる病気です。
基礎疾患や薬を服用しているシニア犬は、かかりやすいです。
症状には以下のようなものが見られます。
- 嘔吐が続く
- お腹を痛がる
- 黒いうんちが出る
【低血糖症】
低血糖症は、血液中のブドウ糖が極端に低くなっている状態です。
老犬の場合、腫瘍があったり空腹状態で激しい運動を行ったりすると、低血糖症を引き起こす恐れがあります。
- ぐったりして元気がない
- 体のふらつきが見られる
- 脈拍が早く体温が低い
上記の症状が見られたら、すぐに動物病院で受診しましょう。
4.【Q&A】老犬がご飯を食べないときによくある質問
老犬がご飯を食べないときに飼い主さんからのよくある質問についてまとめました。
愛犬の様子に困ったら、ぜひ参考にしてみてください。
4-1.Q.おやつは食べるのですが、欲しがるだけあげてもいいですか?
A.おやつを食べることで、一時的にエネルギーが補給できるなら与えるのは問題はありません。
老犬の場合、空腹状態が続くと体が衰弱し、命の危険もあるため食べ物を口にすることが優先です。
ただし、長期的におやつをあげ過ぎるのは、おすすめしません。
まずは普段食べているフードにトッピングを加えたり、ふやかして食感を変えたりするなど食事内容を見直すようにしましょう。
犬が甘さを求めているなら、さつまいもやバナナなど甘味のある食材を使用して、手作りのおやつを与えるのもひとつの手です。
4-2.Q.ご飯を食べないのに、水は飲むのはなぜですか?
A.老犬がご飯を食べないのに水をよく飲む場合は、内科系の病気が疑われます。
病気の初期症状として多飲があらわれる、以下の病気に注意してください。
【糖尿病】
糖尿病は、シニア犬に多く見られる疾患です。
体に必要な水分が排出されすぎてしまうことから、多飲多尿を引き起こします。
水分量とあわせて、おしっこの量も注意して見るようにしましょう。
【慢性腎臓病】
腎臓の機能が低下することによって尿を濃縮できず、うすい尿を繰り返し排出する病気です。
水を頻繁に欲しがるようになります。
【子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)】
避妊手術をしていないメスの老犬がかかりやすい病気です。
子宮内に細菌が感染して膿がたまるため、多飲、食欲低下、腹部のふくらみが見られます。
これらの病気以外にも、口内のトラブルによって水分だけを欲しがる場合もあります。
病気の初期症状や口内の異常は気づきにくいため、気になるときは早めに動物病院で受診しましょう。
4-3.Q.老犬の栄養補給におすすめの食べ物は何ですか?
A.食欲が落ちている老犬には、体に必要な栄養素を効率よく摂れる食材がおすすめです。
①ささみ
ささみは低カロリーかつ、筋肉のもとになる良質なタンパク質が含まれています。
加齢とともに減少する血流や筋力を支えるために役立ちます。
老犬には、茹でたささみをペースト状にして与えましょう。
ドライフードをささみの茹で汁でふやかしてあげるのもおすすめです。
②キャベツ
キャベツは、お腹の調子を整える食物繊維や抗酸化作用のあるビタミンCなど、栄養素が豊富です。
摂取することで、内臓機能の衰えを助けてくれます。
生のままが一番効率よく栄養補給できますが、老犬の場合は葉先のやわらかい部分を選び、茹でたものを与えるようにしましょう。
③魚(まぐろ、鮭、いわしなど)
まぐろや鮭、いわしなどには、アミノ酸スコア100の良質なタンパク質が含まれています。
カルシウムや脳のはたらきを活性させるDHA・EPAも豊富なので、老犬の健康維持におすすめの食べ物です。
すり身やパウダータイプであれば、いつものフードに混ぜることで手軽に摂取できます。
手作りで与えるときは必ず加熱調理し、骨や皮を取り除いたものを与えるようにしましょう。
④さつまいも
さつまいもに含まれる炭水化物は、エネルギー補給に役立ちます。
甘味もあり、少量で多くの栄養素を摂ることができるので、食欲不振の老犬にぴったりの食べ物です。
与えるときは、茹でるか焼いてからあげましょう。
⑤チーズ
チーズは、タンパク質と脂質が豊富に含まれ、香りもしっかりと感じられる食材です。
チーズのなかでも塩分の少ないモッツァレラチーズ、カッテージチーズが老犬にはおすすめ。
ただし、心臓病・腎臓病のあるワンちゃんには、チーズを与えないように注意しましょう。
老犬がご飯を食べないときはひと工夫して食事を与えよう!
犬はシニア期に入ると、さまざまな老化現象が見られるようになります。
愛犬の食欲が落ちている様子を見るのは飼い主さんも不安かもしれませんが、食事の量や回数を見直して、食生活をサポートしてあげましょう。
栄養価の高い食材を取り入れたり、食器の位置を変えたりするひと工夫も愛犬の健康維持につながります。
また、シニア期は体の衰え以外にも、ストレスや環境の変化に敏感になる時期です。
飼い主さんとのスキンシップの時間や、心のこもった手作りの食事が老犬にとっては癒しとなります。
愛犬がいつまでも健康に過ごせるように、今日からできることを実践していきましょう!
まとめ
老犬は、味覚や嗅覚、筋力などの低下によって食欲が落ちやすくなる
愛犬の様子に応じて、食事の回数や量を調整する
良質なタンパク質や抗酸化作用を含む食材を積極的に取り入れる
食器の位置を高くして、老犬の体の負担を減らす
食欲不振+ほかの症状が見られたら、動物病院を受診する