老犬が自力で食事を食べられなくなると、人間のサポートが必要になります。
しかし、食事介助の方法や老犬に適したフード選びに悩んでしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、老犬の食事の食べさせ方や介護のポイントについてお伝えします。
流動食の作り方も紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね!
1.寝たきりの老犬(高齢犬)の食事はどうすればいい?介護のポイント5つ
はじめに、高齢犬の食事介護でおさえておきたいポイントを5つ紹介します。
1-1.栄養価の高い食べ物を選ぶ
体重減少や食欲不振がみられる老犬には、食事から効率よくカロリーを摂取する必要があります。
内臓のはたらきも衰えてくるため、少量でもしっかりと栄養補給ができる食材を選ぶようにしましょう。
<高齢犬が摂取したい栄養素>
①動物性たんぱく質
老犬の関節や筋力維持に役立つ栄養素です。
動物性たんぱく質を多く含む食品には、ささみや鶏むね肉、白身魚、乳製品などが挙げられます。
②オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸とは『αリノレン酸』『EPA』『DHA』の3つの必須脂肪酸の総称で、老犬の皮膚や脳を健康に保つ効果があります。
熱に弱く酸化しやすい栄養素のため、亜麻仁油やエゴマ油などのオイルを活用して、普段のフードに加えてあげるといいでしょう。
③コンドロイチン・グルコサミン
コンドロイチンとグルコサミンは、老犬の弱った骨や関節ケアに役立つ栄養素です。
きのこ類や、牛・豚・鶏の軟骨などに豊富に含まれています。
④プロバイオティクス・プレバイオティクス
プロバイオティクスとプレバイオティクスは、加齢とともに胃腸のはたらきが低下しやすくなる老犬の腸内環境を整えてくれる栄養素です。
2つの成分が簡単に摂れるおすすめの食材は、『バナナ✕ヨーグルト』の組み合わせ。
また、りんごやキウイ、キャベツ、アスパラなどにも多く含まれています。
1-2.柔らかいフードまたは流動食を与える
飲み込む力や消化機能が低下してきた高齢犬には、柔らかいフードや流動食が適しています。
まずは、普段食べ慣れているドライフードをふやかしたり、ウェットフードに水分を足したりして、柔らかさを調整してみてください。
ふやかしたフードを与えても老犬がうまく飲み込めずに吐いてしまう場合は、流動食を検討しましょう。
流動食に切り替えるときは、一度かかりつけ医に相談することをおすすめします。
1-3.食事時間をできるだけ短くする
寝たきりの高齢犬になると、食事をするだけでも体力を消耗します。
食事時間は15分を目安に、長くても20分以内にしましょう。
食事介助に使う道具は事前に用意しておくと、効率よく食事を済ませることができます。
もしも愛犬のご飯が進まないときは、一度食事を下げてタイミングを見直したり、フードを別のものに替えたりして柔軟に対応することが大切です。
老犬の体力を考慮しつつ、飼い主さんの介助の負担も減らすように心がけましょう。
1-4.水分を積極的に与える
老犬は、加齢とともに脳のはたらきが鈍くなることから、喉の渇きを感じにくくなります。
高齢犬になると、水飲み場までの短距離の移動でも億劫になることもあるので、飼い主さんが積極的に水を与えるようにしましょう。
水分を取ることで脱水症状を防ぐだけでなく、口の中を清潔に保つ効果もあります。
老犬が水をあまり飲まないときは、かつおぶしのだし汁やヨーグルトなどで味を足してあげるのもおすすめです。
味のある犬用ミルクやスープなどを活用してもいいでしょう。
1-5.食事回数を3~4回に分ける
シニア期(高齢期)の食事は、1日3〜4回に分けて与えるようにします。
高齢犬になると、成犬期と比べて一度に食べられる量が減り、消化吸収に時間が必要になるためです。
この時期は、食事の時間や間隔にはあまりとらわれず、愛犬が食べられるものを食べられるときに与えるのがポイントになります。
1日の給餌量を守りながら、老犬によっては2〜5回と幅を持たせて対応してもいいでしょう。
2.老犬の食事(流動食)の食べさせ方
老犬に流動食を与えるときは、飼い主さんが効率よく介助をすることが大切です。
慣れないうちは時間がかかって大変かもしれませんが、老犬が安心して食事ができるように流れを把握しておきましょう。
老犬の食事(流動食)の食べさせ方は、次の通りです。
- 上半身を起こす
- シリンジ(注射器)で流動食を含ませる
- スポイトで水を飲ませる
- 食べ終わったら口の中をきれいにする
- そのままの体勢で20分様子をみる
それぞれ詳しく解説します。
2-1.①上半身を起こす
はじめに身体を優しく支えて上半身を起こしてあげましょう。
頭を高くすることで、飲み込んだ食べ物が胃の中に落ちやすくなります。
犬種によっては体が大きかったり、動くのを嫌がったりする老犬もいるかもしれません。
その際は、厚みのあるクッションや毛布を体の下に敷き、上体を高くしてあげてください。
2-2.②シリンジ(注射器)で流動食を含ませる
上半身を起こしたら、シリンジ(注射器)を使って流動食を与えます。
シリンジの先端を老犬の口の横側(犬歯の後方)から入れて、口先に向けて少しずつ流動食を注入するのがポイントです。
正面よりも横側から介助することで、流動食がこぼれにくくなります。
また、口を軽く閉じさせて、喉をさすってあげると飲み込みを促進する効果があります。
2-3.③スポイトで水を飲ませる
流動食の進みが良いと続けて与えたくなりますが、老犬は飲み込む力が低下しているため、食事の合間に水を飲ませるようにしてください。
水分補給には、スプーンよりもスポイトがおすすめです。
シリンジ同様、スポイトの先を老犬の口の横側から入れて水を垂らすようにしましょう。
水を飲むことによって、喉や食道に残っている流動食が胃に流れやすくなります。
2-4.④食べ終わったら口の中をきれいにする
シニア犬は免疫力も低下しているため、歯周病にかかりやすくなります。
歯周病を放っておくと、さらなる病気につながってしまうので注意が必要です。
食後は歯ブラシを使って口の中をきれいにし、口腔内を清潔に保つようにしましょう。
歯ブラシのほかにも、湿らせたガーゼや歯磨きシートで拭き取るのも効果的です。
前歯から奥歯へと順に、やさしく拭き取ってあげてください。
2-5.⑤そのままの体勢で20分様子をみる
食事を終えたら上半身を起こしたままの姿勢で、20分ほど様子をみます。
老犬は食べ物の消化吸収に時間がかかるため、問題なく食べ終えても異変が起きていないか確認するようにしましょう。
様子をみている間に、老犬の体をやさしく撫でてあげると、スキンシップもとることができるのでおすすめです。
3.老犬の食事介助をする際の注意点
老犬の食事介助を間違った方法で続けると、体に負担をかけてしまうため注意が必要です。
ここでは、老犬の食事介助をする際の注意点についてお伝えします。
3-1.あごを上に向けない
老犬のあごを上に向けて食事を与える行為は、絶対にしないでください。
食べ物が誤って気管に入り、誤嚥(ごえん)を引き起こしてしまいます。
食事介助をするときは、あごを上に向けるのではなく、老犬の視線が自然と真正面を向く位置が適切です。
老犬を支えながら食事を与えるのが難しいときは、クッションや毛布を重ねて姿勢を維持するようにしましょう。
3-2.しっかり飲み込めているか確認する
流動食を与えるときは、老犬がしっかり飲み込めているか確認してください。
ひと口与えたら、愛犬の喉元に手を触れるようにします。
「ゴクン」と動きがあれば、飲み込めている証拠です。
飲み込めずに吐き戻した場合は、フードの硬さや与えるときの姿勢が合っていないことが考えられます。
その場合は、介助の仕方を一度見直してみましょう。
3-3.嘔吐したら獣医師に相談する
あきらかに嘔吐症状だと分かる場合、すぐに病院を受診するようにしてください。
とくに嘔吐を繰り返すときは、急性胃炎や胃腸炎など消化器系の疾患を引き起こしている可能性が考えられます。
嘔吐のほかにも、ぐったりしていないか、下痢をしていないかなど、愛犬の様子をよくみるようにしましょう。
飼い主さんの都合によっては、すぐに受診ができないこともあるかもしれません。
そのときは、電話でかかりつけの獣医師に症状を相談するといいでしょう。
4.【基本】老犬(シニア犬)のための流動食の作り方
最後に、自宅で老犬(シニア犬)の流動食を作る方法を紹介します。
基本をおさえておけば、ほかの食材に応用できるので、ぜひ参考にしてみてください。
老犬の流動食の作り方は、次の通りです。
- ドッグフードをぬるま湯でふやかす
- ミキサーでペースト状にする
- 水分を足しながら硬さを調整する
それぞれくわしく解説します。
4-1.【手順①】ドッグフードをぬるま湯でふやかす
まずは普段食べているドッグフードに水分を足して、ふやかしていきます。
フードをふやかすときのポイントは以下の3つです。
- ぬるま湯を足す(熱湯は使用しない)
- 水分を加えたら10〜15分放置する
- 水分量が多くなり過ぎないようにする
熱湯を足すと、ドッグフードに含まれる栄養素が壊れてしまうことがあるので気をつけましょう。
毎食ふやかすのが難しい場合は、レンジで20秒ほど温めてもOK。
指先でフードをつまんだときに、力を入れなくても形が崩れるくらいの柔らかさが最適です。
一度ふやかしたフードは菌が繁殖しやすくなっているため、残っても保存せずに処分しましょう。
4-2.【手順②】ミキサーでペースト状にする
フードをふやかしたら、残った水分ごとミキサーにかけてペースト状にしましょう。
フードの繊維や粒などの細かい部分がなくなり、喉越しの良いトロトロした流動食になります。
また、シリンジの注入もしやすくなります。
4-3.【手順③】水分を足しながら硬さを調整する
ミキサーでペースト状にしたら、少しずつ水分を足して流動食の硬さを調整しましょう。
水分が少ないと、老犬はうまく飲み込むことができません。
反対に水分が多くなると、流動食の量が増えてしまうため、消化不良や愛犬の体の負担につながってしまいます。
愛犬の食事の様子や体調をみながら、硬さを調整してあげましょう。
老犬の食事介助をして元気になってもらおう!
犬は、わたしたち人間よりも早いスピードで歳をとっていきます。
愛犬が歳を重ね、自力で食事ができなくなったり、介護食が必要になったりしても、日々の食事が老犬の健康維持に大事な要素であることは変わりません。
介護が必要になると、飼い主さんの負担が増えて大変な面もありますが、全てを完ぺきにやろうとせずに出来ることから愛犬の食事をサポートしてあげましょう。
飼い主さんが愛犬を想って関わる姿勢が、老犬の何よりの活力になるはずですよ!
まとめ
・シニア期の食事は栄養バランスを考えた食材を取り入れる
・愛犬の様子に合わせて食事の回数や柔らかさを調整する
・老犬には水分補給を意識して行う
・食事介助の際は上体を高くし、あごを上に向けない
・流動食を作るときは、ぬるま湯を使用する