愛犬が突然吐いてしまうと、飼い主さんとしては驚いてとても不安になりますよね。
犬が吐くのは様々な原因がありますが、軽度で様子を見れば大丈夫なものから、今すぐに病院へ連れていった方がいいものまでたくさんあります。
今回は犬の吐き方による違いや考えられる病気、そして家でできる対策についてお伝えします。
犬は吐き方には3パターンあります!
犬は人に比べると吐きやすい体の構造になっているのですが、犬が吐く行為には実は3つのパターンあります。「嘔吐」「吐出(吐き出し)」「嚥下困難(嚥下困難)」に分けられるのですが、具体的にどのような違いがあるのか見ていきましょう。
嘔吐
「嘔吐」は、私たち人間と同じように食べたものが胃から吐き出されることを指します。いわゆるゲロを吐くという状態のことです。
嘔吐は胃で消化中の食べ物が吐き出されますので、吐瀉物はドロドロとした形状をしているのが特徴的です。
また、嘔吐では吐く前に気持ち悪そうに舌を出したり、お腹を上下させたりしている様子がうかがえます。
吐出(吐き出し)
「吐出」は「吐き出し」とも呼ばれ、食べた物が胃に到達する前の食道にある時点で逆流し、外に吐き出される状態を指します。
食物が消化される胃まで到達していないため飲み込んだ時の形状が保たれて吐き出され、犬は再度食べようとすることもありますが、食べてしまっても問題はありません。
また、吐出は主に喉に引っかかった際や咳き込んだ時に起きる症状なので、吐出する直前に吐き気を感じることはありません。
嚥下困難(嚥下障害)
「嚥下困難」とは舌や食道がうまく機能せずに、食べ物が飲み込みづらい状態になってしまうことを言います。
胃まで食べ物を運ぶ能力が低下しているため、食道の途中で食べ物が留まってしまったり、誤って気道の方に食べ物を運び込んでしまったりするため、苦しくてむせて吐いてしまいます。
上手に飲み込むことができないため食欲が低下する、喉に炎症を起こして声が掠れる、などの症状が見られます。
健康な犬が吐いてしまう原因は何?
犬が吐いてしまったからといって、必ずしも危険な病を患っているという訳ではありません。健康な犬でも吐いてしまうことがあるのですが、健康な犬は一体どのような状況で吐いてしまうのでしょうか?
空腹で胃液を吐く
犬が吐く原因でよく聞くのが、お腹が空きすぎて胃液を吐いたという状況です。空腹時にも胃は動いているのですが、消化するものがないため無駄に活動していることになります。その際に胸焼けを感じることがあり、その影響で胃液を吐いてしまうことがあるのです。
常に胃に何か入っていれば無駄に胃を働かせることにはなりませんので、1日に与えるフードの量は変えずに食事の回数を増やすなどして、食事と食事の間隔を短くすることで改善が見込めます。
また、犬の嘔吐物の中には白い泡が混ざっていることがありますが、それは「逆流してきた胃液」です。上記の対策をとってあげることで改善されるはずですのでご安心ください。
勢いよく食べすぎてむせる
美味しいご飯を目の前にして急いで食べる様子は愛くるしくも見えますが、そのあとに食べたものを吐き出してしまうようであれば、早食いが原因でむせて吐出している状態です。
吐出した後も元気にフードや吐いたものを食べようとしているのであれば特に問題はありませんが、早食いを続けていると誤嚥して肺炎の原因にもなるため、早食い防止用のお皿を使うなどの工夫をすると良いでしょう。
車酔いで気分が悪くなる
人間と同じように、犬でも車酔いをしてしまう子がいます。幼い頃から車に慣れていれば嘔吐することが少ないのですが、車に慣れていない子や、食後すぐの乗車では吐いてしまう可能性が上がりますので注意しましょう。
もしも車酔いで吐いてしまった場合には、車を停めていったん外に出てリラックスさせてあげてください。窓を開けて新鮮な空気が吸えるようにしてあげるのも効果的です。
犬が吐いた時に考えられる病気
嘔吐は犬から飼い主に向けられたSOSの中でも最も分かりやすいものの1つです。その為、吐く前後の様子や嘔吐物をしっかりと観察しておくことが重要です。少しでも「緊急性があるかも…」と感じた場合には、今すぐに病院へ行きましょう。
様子を見ている間に手遅れになってしまう可能性もあるので、異常を感じたらすぐに動物病院へ連れていってください。
アレルギー
食物アレルギーの反応の1つとして、犬が嘔吐や下痢をしてしまうことがあります。アレルギーでは嘔吐や下痢以外にも、皮膚の赤みや痒みなどの症状が見られますので、愛犬の様子を見て判断しましょう。
愛犬が何の食材に対してアレルギーを持っているかは、動物病院で処方されるアレルギー除去食を食べさせながら判断するのが一般的です。愛犬に快適な食生活をおくってもらうためにも、アレルゲンを含まない美味しいご飯を見つけてあげましょう。
胃炎・食道炎
吐瀉物に血液が混ざっている場合は、なんらかの理由で胃や食道に傷が付いてしまっているということが見て取れます。
胃炎は誤飲や感染症、食中毒、寄生虫などの様々な原因が考えられますので、まずは動物病院で相談してみましょう。
また、人と同じようにストレスで胃に穴が開くということもあります。ストレスの場合は動物病院では判断ができませんので、飼い主さん自身が何が原因なのかを見極めてあげてください。
異物の誤飲
毒性のある食べ物や、食べられない雑貨などを愛犬が食べてしまうことを誤飲と言います。
誤飲は本来犬の体内に入ってはいけないものなので、犬は吐き出そうと嗚咽をすることがあります。全て吐き出すことができれば良いのですが、体外に排出されずに体内に残ってしまうと命に関わる病気を併発してしまう恐れがありますので、様子がおかしい場合はすぐに動物病院に連れて行きましょう。
胃捻転
胃にガスが溜まることで膨らんだ胃がねじれて起こる病気です。
胃の周囲にある血管も同時にねじれるので、血液の流れが止まってしまいます。胃粘膜の細胞が壊死していくので激しい腹痛に襲われます。
胃捻転は発見が遅れると手の施しようがなくなってしまい、致死率がグンと跳ね上がりますので、愛犬の様子がおかしい場合はすぐに動物病院に連れて行きましょう。
脳疾患
吐き気は脳の嘔吐中枢が刺激されることで催されます。
犬が吐き気を催した場合は消化器の病気を疑いがちですが、異常がなくても脳にダメージが加わることで吐き気を催す場合があります。そのため頭を激しく打ち付けて脳震盪を起こした時や、脳に腫瘍がある時にも嘔吐中枢が刺激されてしまうかもしれません。
犬が吐き気を催している理由に全く心当たりがない場合、もしかすると目には見えない頭の内部で異常が起きている可能性もありますので、怪しい場合はすぐに検査ができる大きな動物病院に連れて行きましょう。
内臓の腫瘍
胃は外部から刺激されることで吐き気を催すことがありますが、胃の周辺の内臓に腫瘍があった場合は体内から胃を圧迫することになってしまい、その結果犬が嘔吐しやすくなっているというケースがあります。
良性の腫瘍であればそのまま放置することもありますが、悪性腫瘍の場合はすぐにでも取り除かないと全身に転移してしまうという場合もありますので、早期発見のためにも様子がおかしければ動物病院に行ってみることをおすすめします。
パルボウイルス感染症
愛犬が嘔吐と下痢を同時に繰り返しているようであれば、パルボウイルス感染症という危険な感染症の可能性があります。パルボウイルス感染症は繰り返す嘔吐と、ケチャップのような下痢をするのが特徴的なので、愛犬の排出物をよく確認してください。
早急な治療を行わないと命が危険に晒されてしまうことになります。感染力が高く、飛び込みで動物病院に連れて行くと一旦追い出されてしまう可能性がありますので、一度動物病院に症状を伝えた上ですぐに病院まで連れていきましょう。
嘔吐を防ぐ為に日頃から気を付けましょう!
ごはんをガツガツと美味しそうに食べてくれるのは微笑ましいことですが、早食いは犬の胃や腸に負担をかけてしまい、食べたものを吐く原因になってしまう場合もあります。ここでは犬が吐いてしまうのを防ぐために、日頃からできることをいくつか紹介します。
- 早食い防止用のお皿でご飯をあげるようにする
- フードは首の高さに合わせてた台に乗せてあげる
- おやつは1度にたくさん与えず複数回に分けてあげる
- アレルギーを把握してアレルギー除去フードを与える
- 食後のあと30分〜1時間は運動させないようにする
- ご飯の間隔を8時間以上空けないようにする
- 病院での定期検診を習慣化する
まとめ
愛犬の突然の嘔吐は、飼い主さんたちをとても不安な気持ちにさせます。一過性でも緊急性でも、診断の要となるのは「愛犬の様子を冷静に観察すること」です。慌ててしまう気持ちをグッと抑えて、愛犬の様子をじっくり観察し、いつもと違うと感じたときはあれば迷わず病院へ行きましょう。
食べた物の種類や量、運動量、水を飲んだ量や回数などを書いておくことで、万が一のときにより正確な情報を獣医師に見せることができます。愛犬からのSOSを見逃さないように、飼い主としてできる最善のことをしてあげましょう。