大切な愛犬(シニア犬)が突然下痢になると、飼い主さんは心配になりますよね。
自宅で様子を見るべきか、受診を急いだほうがいいのか判断に迷ってしまうかもしれません。
この記事では、老犬が下痢を繰り返す原因と飼い主さんにできる4つの対処法をご紹介します。
下痢の症状に合わせて適切なケアが行えるよう、ぜひ参考にしてください。
1.老犬が下痢をしやすい(繰り返す)原因
老犬の下痢は、突然起こる『急性下痢』と何日も繰り返す『慢性下痢』の2つがあります。
はじめに、老犬の下痢を引き起こす原因について知っておきましょう。
1-1.消化機能が低下している
犬は加齢とともに、消化機能のはたらきが低下していきます。
消化液の分泌が減少するため、食べ物の消化吸収がスムーズに行えず、下痢を引き起こしてしまうのです。
とくに脂質の多い食べ物は分解がしづらく、老犬の腸内に残りやすい傾向があります。
食事を見直して1〜2日経っても改善しないときは、消化器系の病気の可能性も考えられます。
1-2.体温調節機能が低下している
加齢によって、体温調節機能が低下することも、老犬の下痢を引き起こす原因になります。
老犬は成犬期と比べて活動量が減るため、熱を生産する筋肉のはたらきが衰え、血行不良になりやすいです。
とくに、寝たきりの高齢犬が気温の低い環境やクーラーの効いた室内で長時間過ごすと、お腹が冷えてしまいますので気をつけましょう。
また、冷たい飲み物や水分の摂りすぎも、内臓を冷やす原因となるため注意が必要です。
1-3.腸内環境が変化している
犬の腸内には善玉菌と悪玉菌が存在し、それぞれのバランスが均衡に保たれることで腸の健康を維持しています。
しかし、加齢とともに善玉菌の数は減り、悪玉菌の数が増殖していきます。
こうして腸内環境が乱れることで、下痢が引き起こされてしまうのです。
悪玉菌は、加齢のほかにも運動不足やストレス、食べ物によっても増殖します。
1-4.ストレスを感じている
老犬は、ストレスを感じたときにも下痢をすることがあります。
ストレスによる下痢は、不安や緊張から自律神経が乱れて腸が過敏になっている状態です。
たとえば、ペットホテルでの宿泊や慣れない来客があると、普段とは違った環境に不安を感じやすくなります。
そのほかにも騒音や気候の変化、老化で思うように体を動かせないこともストレスとなってしまいます。
犬がストレスを感じる部分はそれぞれ違うため、飼い主さんは今まで以上に気を遣ってあげなくてはなりません。
1-5.アレルギー反応が出ている
特定の物を食べたあとに下痢をする場合は、アレルギー反応が出ている可能性が高いです。
アレルゲンとして挙げられる食品には、肉類(牛・鶏)、乳製品、卵、小麦などがあります。
フードに含まれている食品添加物に反応して、下痢が起こる子もいます。
アレルゲンは血液検査で調べることができますが、犬の場合ほかの過敏症も混在していることが多いので、目安程度にするのがいいでしょう。
1-6.寄生虫・ウイルス・細菌に感染している
目には見えない寄生虫やウイルス、細菌に感染することで下痢になる場合もあります。
免疫力が低下している高齢犬がかかると、下痢だけでなく、さまざまな合併症にもつながってしまうので注意が必要です。
◯寄生虫
・鞭虫症(べんちゅうしょう)
・鉤虫症(こうちゅうしょう)
・コクシジウム症
・ジアルジア症
・トリコモナス症 など
◯ウイルス
・犬パルボウイルス感染症
・犬ジステンパーウイルス感染症
・犬コロナウイルス感染症
◯細菌
・クロストリジウム症
・カンピロバクター症
・レプトスピラ症
・サルモネラ症
感染源は、便検査・PCR検査で判別することができます。
予防薬や適切な時期にワクチン接種を行うことで、防げる病原体もあります。
ただし、中には人間や他の犬に移ってしまうものもあるため注意が必要です。
1-7.異物や毒物を誤飲してしまった
犬が、本来口にすべきでない異物や毒物を誤飲したときにも下痢が起こります。
室内・室外を問わず、犬の身近には危険物がいっぱいです。
とくに、下記のものには注意しましょう。
<老犬が注意すべき物>
- たばこ
- 人間用の薬
- 腐った食べ物(生ゴミ)
- 食用油
- 観葉植物、花
- ペットシーツ、ティッシュなど
犬がこれらの異物を飲み込んでしまうと、有毒成分が消化機能を刺激して、下痢症状が引き起こされてしまいます。
老犬になり寝たきりの時間が増えたとしても、わたしたち人間は誤飲予防に努める必要があります。
1-8.病気にかかっている
下痢が続き、愛犬がぐったりしている様子が見られる場合には、何らかの病気にかかっている可能性が高いです。
シニア犬が下痢をしたときに考えられる病気には、以下のものがあります。
がん、腎臓病、肝臓病、腸疾患、糖尿病、腫瘍、子宮蓄膿症など |
老犬が病気にかかっている場合は、下痢以外の異変も同時に見られることが多いです。
病気を特定し、適切な治療を受けられるように早めに動物病院で受診するようにしましょう。
2.老犬が下痢をしたときの4つの対処法
老犬が下痢をしたときは、飼い主さんは慌てずに落ち着いて対応しましょう。
まずは老犬の様子と、便の状態を忘れずに確認することが大切です。
ここでは病院で受診する前に、自宅でできる対処法について解説します。
2-1.柔らかくて消化の良い食事を与える
老犬が下痢をしたときは、胃腸の負担を減らすために柔らかくて消化の良い食事を与えるようにしましょう。
フードをぬるま湯でふやかしたものや、ウェットフード、温めたスープ類が適しています。
手作りの場合は、下記の食材がおすすめです。
- すりおろしりんご
- ヨーグルト
- 豆腐
- 白身魚(タラ、カレイなど)
給餌量は普段より少なめにし、老犬が食べられるようになったら徐々に戻すようにします。
下痢をしているからといって、自己判断で絶食をするのは大変危険です。
悩んだときは、かかりつけ医に相談をしてから行うようにしましょう。
2-2.水分をこまめに補給する
下痢をすると、犬の体に必要な水分も一緒に体外に排出されてしまいます。
老犬は喉の渇きを感じづらく、進んで水を飲む回数も減るため、飼い主さんが気づかないうちに脱水状態になっていることがあります。
失われた水分を補給するためにも、少量ずつこまめに水を与えるようにしましょう。
老犬の脱水は、皮膚の状態を見ることで判断できます。
目や舌の乾燥があり、皮膚をつまんでも形が元に戻りづらいときは脱水を引き起こしている状態です。
2-3.体を温める
もともと犬は、自分で体温調節をしづらい動物です。
とくに老犬になると、体温調節機能が低下するため、わたしたち人間は意識して体を温めてあげる必要があります。
冬場は、暖房やヒーターを使って室温を暖かくし、夏場はクーラーの風が直接体に当たらないように調整してください。
そのほかにも犬用の腹巻きや温めたタオル、湯たんぽで体を包むのも効果的です。
体を温めながら一緒にマッサージをしてあげると、老犬がリラックスして過ごせるでしょう。
2-4.生活環境を見直す
下痢の改善には、老犬の生活環境を見直すことも重要です。
犬はストレスを感じると、震えたり体をこわばらせたりといった、普段とは違う仕草を見せることがあります。
室温や騒音が不快になっていないか、老犬が過ごす環境を一度、確認してみましょう。
寝たきりで元気がないときは、様子を見ながら散歩の頻度を増やすのもおすすめです。
体を動かすことで気分が変わり、お腹の調子にも良い影響を与えてくれます。
犬の生活環境を見直すときは一気に変化を与えるのではなく、老犬が慣れた空間でリラックスできるように行ってくださいね。
3.【要注意】老犬にこんな下痢・症状があれば動物病院へ
老犬の下痢には、速やかに動物病院で受診した方がいい場合もあります。
犬は高齢になるほど容体が急変しやすいため、以下の症状が見られたらすぐにかかりつけ医に相談しましょう。
<下痢の症状>
- 短い間隔で下痢がある
- 3日以上、下痢が止まらない
- 白色便、血便、黒色便である
- 大量の下痢が頻繁に起こる
<下痢以外の症状>
- 震え
- 嘔吐
- 発熱
- 食欲、元気がない
- 誤飲の可能性が高い
- お腹に触れると怒るなど
病院に行く際は、原因をスムーズに特定できるように下痢便を持参しましょう。
持ち運ぶのが難しい場合は、写真に残して獣医師に見てもらうのも有効です。
できるだけ症状を詳しく伝えることで、適切な処置のもと老犬の負担を減らすことにつながります。
老犬が下痢をしたら適切に対処しよう!
老犬の下痢には、身体機能の低下やストレス、感染症にかかっているなど、さまざまな原因が考えられます。
原因によって、症状の重さや対処法はそれぞれ異なるため、飼い主さんは日ごろから愛犬の便の状態をよく確認するようにしましょう。
下痢以外の症状がなければ、フードの見直しや生活環境を整えるようにし、老犬の負担を減らしてあげることが大切です。
一方で、色や量がおかしかったり、下痢以外に気になる症状があったりした場合は、すぐに動物病院で受診しましょう。
老犬がいつまでも健康に過ごせるように、体と心のケアも忘れずに行ってあげてくださいね。
まとめ
・老犬の下痢は、内臓機能の低下やストレスによって引き起こされる
・細菌やウイルス、アレルギーなどの外的刺激も老犬の下痢を起こす原因となる
・下痢が治るまでは、柔らかくて消化の良い食事を与えるようにする
・老犬が下痢のときは水分補給をこまめに行い、体を温めると効果的
・下痢が治らず食欲不振や元気がないなどの症状があるときは、すぐに動物病院で受診する