愛犬が攻撃的な性格で、噛みつく、唸るなどのトラブルが絶えないとお悩みの飼い主さんが増えています。どうして犬は攻撃的になって問題行動を起こすのでしょうか?その理由は、幼いころからの生活環境や飼い主さんの犬への接し方などさまざまな要因が考えられます。今回は犬が攻撃的になる要因や対策方法、さらに攻撃的な性格が多いとされている犬種もご紹介します。
犬が攻撃的になる要因で考えられることは?
間違ったしつけで犬が攻撃的な性格になることも
愛犬が攻撃的な性格になって、噛みつく、無駄吠えをするなどの問題行動を起こす原因として、まず考えられるのは家庭での間違ったしつけです。犬に必要最低限のしつけをすることは社会生活を過ごす上で最も大切なことで、決して軽視してはいけないものです。
しかし、子犬の頃に可愛いがゆえに甘やかしてしまう、攻撃的な行動があっても放置するなど、飼い主が適切なしつけを怠ってしまうことは、犬が攻撃的になるのを助長してしまいます。
しつけは、ただ感情的に行き当たりばったりで進めるものではありません。犬の年齢に適したしつけ方法を理解し、実践していくことが大切です。
攻撃的な犬をしつけるには、飼い主の優位性を確立させる、正しい行動をしたときにご褒美をあげる、間違った行為をしたら叱ることを心がけましょう。これらの方法を何度も焦らず繰り返していけば、攻撃的な性格を少しずつ矯正していくことができます。
また、犬の矯正トレーニングを引き受けている専門家もいて、適切なアドバイスを受けることもできます。自分だけでは手に負えない場合は、専門家を頼りにするのも改善方法のひとつです。
急に犬が攻撃的になるのは病気の症状かも?
犬が急に攻撃的になる原因として、病気が潜んでいることも考えられます。
犬がペットとして飼いならされている今でも、攻撃性は本能の一部として残っています。病気やケガなどで体に何らかのダメージが加わると、攻撃性を露わにして身を守ろうとします。
攻撃的になった犬をただ叱りつけるだけでなく、犬の様子を観察して普段と違うようであれば病気や怪我を疑ってみましょう。骨や関節の異常による強い痛み、皮膚病や寄生虫、ウイルス感染による発熱やかゆみ。脳の疾患による認識能力の低下や混乱などによって、攻撃性が増す異常行動がみられることがあります。
狂犬病もその名の通り、犬が凶暴になる病気です。1957年以降、日本での犬への症例は見られなくなりましたが、海外旅行の際に犬に噛まれて人が感染した症例は数件あります。今後発症しない可能性は決して無いとは言い切れません。予防法としては年に一度のワクチン接種が法律で定められていますので、忘れずに接種するようにしましょう。
犬の攻撃的な行動にはこんな意味がある!?予防や対策法はある?
愛犬が飼い主を噛む・唸るなどの行為で攻撃するのはなぜ?
『攻撃行動』と呼ばれる犬の問題行動として、唸る・歯をむき出して威嚇する・噛む・吠えるといった行動が含まれます。飼い主に対しては、例えば犬のエサが入った皿を取ろうとする、ある場所からどくように命令した際に攻撃行動に出ることがあります。
犬が攻撃行動に出てしまう要因として、犬にとって飼い主が優位であることを確立させていないことも考えられています。犬を友達、あるいは家族同然に可愛がることは決して悪いことではありません。
しかし、彼らはあくまでも人間に飼育されている立場なので、飼い主が優位に立つことを徹底しなければ、お互いに良い関係を築いていけないのです。
犬に厳しく接するなんてかわいそうだと思ってしまう飼い主さんも多いと思われますが、年齢が低いうちから釈然とした態度をとり続けることが大切です。
現実をないがしろにして、飼い主が犬に人間と同じような自由な生活を与えてしまった結果、我慢すべき領域が理解できず攻撃的になってしまいます。犬の社会性が育たなければ、飼い主以上に犬が苦労をする羽目になってしまいます。
犬の独占欲の強さが飼い主への攻撃行動となって出てしまう
犬の攻撃行動は、本能による独占欲の強さを制御できずに引き起こしてしまうことがあります。大抵の犬はドッグフードやお気に入りのおもちゃなど、自分のものだと認識しているものを一人占めしようとする習性があります。それらを他の犬や飼い主が奪おうとすると、怒りや抵抗となって現れて攻撃行動に出ることがあります。
犬に限らず、人間もお気に入りのものを横取りなどされたら怒りが沸くのは当然のことですね。人間は理性で怒りの感情を抑えることができますが、犬は怒りが頂点に達すると攻撃行動に走ってしまいがちです。独占欲が強くなると、噛みつくなどの攻撃行動によって相手に危害を加えます。
また、犬の飼い主さんへの独占欲が強すぎて、飼い主さん以外の人間や他のペットに対して嫉妬を露わにして攻撃行動に出ることもあります。犬がやきもちを焼く、独占欲が強い性格になる理由として、集団と序列を気にする習性があります。
本来、群れで生活する犬たちはリーダー役を必要としています。リーダーである飼い主さんが他の人間や動物にかまっている姿を見ると、自分が不当な扱いをされていることに怒りを感じます。そこで自分の序列をはっきり認識するために、飼い主さんがかまっている対象を攻撃することがあるのです。
犬が不安を感じることによる恐怖性攻撃行動
恐怖性攻撃行動とは、その名の通り対象への恐怖を感じた際に自分を守るために起こしてしまう問題行動の一種です。知らない人や犬が近づくと、噛みつくなどの行為に出ることが多く、主に幼い頃の社会化が不十分だった犬に起こりがちな問題です。
見知らぬものや慣れていないものを怖いと感じた時、逃げる術が分からない時、頼れる相手がそばにいない時などに吠える、威嚇する、噛むといった攻撃行動で相手を遠ざけようとするのです。
恐怖性攻撃行動はどんな犬種でも起こりやすいといわれていますが、神経質な気質の犬はとりわけ要注意です。繊細で未知のことや見知らぬ人、土地に不安を感じやすい、暴力や虐待などのトラウマを抱えた犬は恐怖性攻撃行動のリスクが強くなります。
飼い主や同居犬を守るための防護的攻撃行動
防護的攻撃行動とは、飼い主や同居犬を守るために、敵対する対象に向かって攻撃行動に出ることです。
例えば飼い主や同居犬に他者が近づく、他の犬が飛びつこうとしている様子を犬が脅威だと感じた際に発現することがあります。また、防護する対象と敵との間に立ちふさがる行為を見せることもあります。
これらは先述の恐怖性攻撃行動と特徴がよく似ている部分があるので、飼い主にとって判別が難しいものです。犬自体が自我や自己主張が強い性格であることも考えられますが、幼少期のしつけに問題があったことも起因しています。特に、生後4ヶ月位まで外に出されなかった犬が突然攻撃的になるといわれています。
トイプードルなどの賢い犬は月齢が進むと攻撃的になる傾向も
トイプードルなどの小型犬は、8ヶ月くらいになると自己主張が強くなり、飼い主の言うことをきかなくなることがあります。
例えばずっと甘噛みを許していると、エスカレートして加減がわからなくなり、本気で噛みついて人にケガをさせてしまうこともあります。
「まだ子犬だから可愛いものだ」と甘やかし、放置してしまうことは、後に攻撃行動などの問題に発展しかねません。だからこそ、正しいしつけを行うことが大切なのです。特にトイプードルなどのIQが高い犬種は、褒めてしつけをすると効果的だともいわれています。
愛犬の攻撃的な行動をやめさせるには?予防と対策法
まず愛犬が攻撃行動を繰り返すのであれば、基本的なしつけとして、飼い主さんの言うことを聞かせる訓練を取り入れてみましょう。正しい行動の後はごほうびをあげる、間違った行動に出れば叱るといった、一貫した態度で接することを忘れないでください。
犬の恐怖性攻撃行動の予防・対策
犬の恐怖性攻撃行動を予防する方法として、犬と触れ合う際に行動をしっかり観察して、恐怖や不安の兆候を読み取ることです。「近寄らないで」「不必要に触らないで」などのシグナルがあれば、強引に近づこうとせずに距離を取って接することを心がけましょう。
また、犬が恐いと感じるものを少しでも減らすことも効果的です。人との触れ合い、見知らぬものに近づくなど多くの経験を通して社会性を身に付けさせることで、物事への恐怖心は少なくなっていくでしょう。成犬になっていても今から少しずつ恐怖に感じるものに慣らしていくことは可能ですので、恐怖性攻撃行動に悩んでいても克服することはできます。
犬の防護的攻撃行動の予防・対策
防護的攻撃行動を克服する方法は、恐怖性攻撃行動の例と同じく恐怖や脅威を感じる物に接する機会を増やしていくことです。早く恐怖心を和らげたいあまりに、飼い主さんが焦って行動する必要はありません。あくまで犬の前では毅然とした態度で接することを心がけ、ゆっくりでもいいから問題を解決できるよう、見守る姿勢を大切にしていきましょう。
犬のストレスを軽減することで攻撃行動を予防できる
犬の攻撃行動は、犬を取り巻くさまざまなストレスが原因となっている場合があります。人間同様、犬もストレスが溜まると健康を害しますし、攻撃的にもなります。
犬がもっともストレスを感じる要因として、運動に関する問題があります。リードに繋がれて自由に動けない、満足に散歩に連れて行ってもらえないことが重なると、運動不足が蓄積してしまいます。
犬の運動不足の弊害は、肥満など健康面に悪影響を及ぼすものもあれば、精神面の不調にも繋がります。精神面の不調として攻撃行動が現れ、飼い主さん以外の人や他の犬に対して過剰に怯える、威嚇するなどの問題行動が見られます。
その他、食事が満足に与えられない、飼い主さんが厳し過ぎる一貫性の無いしつけを続けている、虐待や暴力に晒された環境など、犬が常にストレスを感じる状況に置かれていると攻撃行動を誘発することになりかねません。飼い主さんを始めとする周囲の人たちが環境を改善して、犬のストレス要因を取り除くことを始めていきましょう。
子犬の頃の社会化トレーニングが大切
犬は社会化期の過ごし方で性格が決まるといわれています。社会化期と呼ばれる生後3週齢から12週齢までの期間は、さまざまな人や犬、場所に触れさせて刺激を与えることで社会性を育てることが大切です。この時期は外界に対する強い好奇心と学習意欲を見せ始めるので、他者とのコミュニケーションを学ばせるのに最適であるともいえます。
そのため、社会化期の子には外の環境に触れさせることから始めましょう。まずは家の周りから始め、近所の公園、人の集まる場所など、徐々に活動範囲を広げていくことが犬にとってよい刺激となります。
しかし、犬にとって大切な社会化期に外界とのコミュニケーションを遮断して過ごしてしまう、飼い主さん以外の人間や環境との触れ合いがないまま育ってしまうと、成犬になってから外界に恐怖心を持ち、攻撃的な性格に豹変してしまうことがあります。
社会化期である12週齢までに他の犬と接触しなかった場合は、犬に対して攻撃的になり、16歳までに人間と接触がなかった場合は、人間に攻撃的になると報告されており、飼い主さんも頭を抱えてしまうようになります。
このような子の場合でもトレーニングをすることで改善されることがありますが、素人には難しいのでプロの方に相談してもいいかもれません。
犬の社会不適応から引き起こされる攻撃行動を防ぐためには、やはり子犬の頃からの多くの経験が重要となってきます。犬が自分のペースで前に進める機会を作るのは飼い主さん次第です。愛情を持って、社会化期に立ち会っていきましょう。
愛犬の環境や接し方を考え直すことで攻撃的な性格は改善される!
いかがでしたでしょうか?愛犬の攻撃的な一面を見てしまうと、育て方が悪かったのではないかと不安や後悔の気持が大きくなってしまいがちです。今からでも、犬に対して威圧するだけでなく愛情を持って接することで、良好な関係を育めるはずです。
また、犬にとってストレスを感じる環境を改善して、暮らしやすさを最優先に考えることもおすすめします。犬に対して思いやりを持って接することが、良好な関係を築くための重要ポイントです。犬との暮らしをもっと楽しむために、改めて環境や接し方について考え直してみませんか?