リラックスしたいときにマッサージを利用する人は多いですよね。
マッサージには筋肉をほぐすだけでなく、ストレス解消や癒しを得る効果があり、犬もマッサージを通じて同様の効果を得ることができます。
「交感神経」と「副交感神経」からなる『自律神経』は、両方のバランスが取れることで健康な体を保つことができる、生命維持に欠かせない神経系です。
ストレスがかかると「交感神経」が優位となり、自律神経のバランスは崩れてしまいます。
マッサージは、筋肉の緊張を和らげ、血流を促進させ「副交感神経」の働きを高める効果が期待できます。
自律神経のバランスが整うことによって、自然治癒力も高まります。
そこで今回の記事では、犬の理学療法インストラクター師範である仲平佐保先生監修のもと、犬のマッサージのやり方やメリット、テクニックについて解説していきます。
マッサージを、愛犬の健康維持にぜひ役立ててみてください。
愛犬をマッサージするメリットとは?
愛犬へのマッサージは、飼い主と愛犬双方に嬉しいメリットがあります。
ここでは、愛犬をマッサージするメリットを解説します。
絆が深まる
マッサージは、お互いの温もりを感じられるコミュニケーション方法の一つです。
大好きな家族に優しく触れられることは、愛犬に充足感を与えます。
同様に、触れているわたしたちの心も温かくなります。
マッサージすることは犬と人との絆を深め、双方の心身によい影響を与えます。
愛犬のストレスが軽減する
愛犬に、攻撃的な態度などの問題行動や食欲不振が見られる場合、過度なストレスが原因となっている可能性があります。
マッサージをすることで、愛犬のストレスを軽減させる効果が期待できます。
大好きな飼い主にマッサージされると、幸せホルモンである「セロトニン」や「オキシトシン」が分泌され、ストレスが軽減されると考えられているからです。
穏やかなマッサージは落ち着きを与え、ストレスを軽減し、心身の健康を高めてくれるでしょう。
また、全身がリラックスすることで自律神経のバランスが整い、血流促進や自然治癒力の向上にもつながります。
健康維持と血行促進
マッサージは筋肉の状態を維持、向上させ、身体全体の動きをよくします。
筋肉の柔軟性が失われると関節の可動域が狭くなり、動きに制限がでてきてしまいます。
筋肉の柔軟性を維持することは、犬のQOL*につながるといえるでしょう。
また、マッサージには血行を促進させる効果もあります。
とくに老犬や動く機会の少ない犬は、どうしても血行が悪くなりがちです。
マッサージで血の巡りをよくすることで、冷えやむくみの予防・改善が期待でき、免疫力を高めることにもつながります。
* 犬のQOL(Quality of Life:生活の質):「愛犬が心身ともに健やかに生きられること」を指し、身体的・精神的・環境的な側面から、その犬がどれだけ快適で幸せな生活を送れているかを示す指標。
愛犬にマッサージする際の注意点と準備

愛犬にマッサージしてあげる際、まず確認すべきは愛犬の体調です。
【マッサージNGの場合】
- 犬が下痢をしている
- 出血や皮膚炎などの部位は避ける(痛みの軽減に他の部位は触ってもよい)
- 捻挫など怪我の熱感がある箇所は避ける(痛みの軽減に他の部位は触ってもよい)
犬の具合が悪いときは、無理にマッサージをおこなってはいけません。
そして、飼い主さんも犬もリラックスできる場所や時間帯を選びましょう。
マッサージの効果を十分に引き出すには、飼い主さん自身がリラックスすることが大切です。
犬は共感性が非常に高い動物のため、飼い主さんの心にゆとりがなかったり、イライラした気持ちで向き合ったりしてしまうと逆効果になってしまいます。
マッサージを始める前に、飼い主さんがおこなうべき準備は下記のとおりです。
【 飼い主の準備 】
- 自分自身がリラックスできている状態にする
- 爪が伸びている場合は切る
- 腕時計や装飾品を外す
- 手が冷たい場合は温める
爪が伸びていたり、腕時計やブレスレットなどの装飾品がついていたりすると、犬の体を傷つけてしまう可能性があります。
事前に爪を整え、腕時計などの装飾品は外しておきましょう。
手の温度をチェックすることも大切です。
冷えた手で急に身体に触れるのは、犬にとってストレスとなります。
手が冷たいときは、こすり合わせたりお湯につけたりして、手の温度を上げてからマッサージを開始してください。
マッサージのやり方&テクニック
愛犬をマッサージする際、強い力はいりません。
圧をかけすぎず優しいタッチで触り、愛犬の反応を見ながらゆっくりと一定のリズムで手を動かします。
愛犬が不快感を示した場合は力を入れすぎている可能性があるため、力を弱めたり、施術する部位を変えたりしてみてください。
それでも嫌がるようであれば、無理にはおこなわず、その日のマッサージは終わりにしましょう。
また、保護犬や過去に怖い体験をした犬は、人に触れられることに対して敏感に反応することがあります。
そうした場合は、好む箇所や短時間のふれあいからはじめ、マッサージに少しずつ慣れさせていくことが大切です。
それでは、部位別にマッサージのやり方とテクニックを紹介していきます。
背中
- 頸椎の両脇に手を優しく置く
- 指全体(中型犬・大型犬は手のひら全体)を使って、耳の尾側の付け根から肩にかけて円を描くようにマッサージする
背中のマッサージは、愛犬がどんな姿勢でもおこなうことができます。
ポイントはゆっくり触れてあげることです。
犬が慣れてきたら、軽く揉んだり刺激したりして、筋肉のこわばりをほぐしてあげてください。
首
- 首を両手で挟みこむように持つ
- 手のひら全体を使って、首の後ろから肩にかけて円を描くようにマッサージする
首は体の中でもコリを感じやすい部位です。
ただし、首は急所なので力を入れすぎてはいけません。
優しく、軽く摩るくらいのイメージでマッサージするようにしてください。
早い手の動きはかえって犬を疲れさせてしまうため、手を動かすスピードもゆっくりがよいでしょう。
顔
- 目の周りを指先で小さな円を描くようにゆっくりと滑らせ、そのまま耳の付け根までマッサージする
- マズル周りも同じようにくるくると指を滑らせ、耳の付け根までマッサージする
- 耳の付け根を親指と人差し指の腹ではさむようにして持ち、耳全体をマッサージする
顔周りから耳まで優しく撫でることで、顔周りもすっきりします。
また、涙やけや鼻水にお悩みのわんちゃんにも効果的です。
ただし、眼球などがあるデリケートな場所なので、指が目に入ったりしてしまわないように気を付けましょう。
後肢
- 愛犬を横向けに寝せる(寝ない子は立たせたままでもOK)
- 脚の付け根から足先に向けて、数回撫で下ろす
- 足先に向けて指一本一本まで優しくマッサージしたら、肉球の上や間も軽く円を描くようにさわる
犬は後脚から衰えるといわれています。
末端の身体意識が衰えやすいことが要因のひとつです。
足の裏まで刺激を与えることで、自分の身体への意識を維持させることができます。
愛犬へのマッサージでさらに絆を深めよう!

愛犬へのマッサージは、身体全体の動きをよくし、血流改善やストレス軽減などにつながります。
スキンシップの一つとして、また健康維持や向上に取り入れてみてください。
愛犬が心地よく感じているか、不快感や不安を感じていないかなど全体的な様子を観察しながら手を動かし、調和が取れたマッサージをすることがとても大切です。
わんちゃんも飼い主さんもリラックスできるタイミングや環境を選んで、ゆったりとした気分でマッサージタイムを楽しんでくださいね。




















