犬の芸の定番とも言えるのががお手やお座り、伏せや待てなどですが、これはしつけにも役立てることができます。
定番のものを一通り覚えさせた後にも何か他に芸を身につけさせたいということもあるでしょう。
定番の芸よりは優先度は下がりますが、犬に覚えさせると何かと便利なものに「ごろん」があります。
犬がゴロンと仰向けに転がってみせる「ごろん」の意味とは
「ごろん」というのは犬が伏せの体勢から横に転がり、お腹を見せた姿勢のことです。
甘えているようで愛らしい姿ですが、これを覚えさせることには大きな意味があるのです。
相手への服従のサイン
ごろんの姿勢は下位の犬が自分より上だと認めた相手に見せるもので、「服従します」「敵意はありません」という意思表示と言えます。
犬は野生で生きてきた動物で、骨で覆われていない急所であるお腹を見せることは命に関わる危険なことです。
そのため、自分が敵だと思っている人には決してお腹を見せようとはしません。
しかし、相手が自分より上だと認め、ケンカをしたくないというような場合にはお腹を見せて「服従」の意思を示すのです。
服従のサインの見極め方としては、耳を伏せたり尻尾を丸めてお腹に乗せているというポイントもあります。
また飼い主がお腹を撫でてあげた際におしっこを漏らしてしまうということもありますが、これは子犬の時に母親に排泄を促された記憶がフラッシュバックするからです。
リラックスした状態であるサイン
犬がお腹を見せる時には、服従しているというわけではなく単にリラックス状態であることもあります。
野生の時は周りが敵だらけだったので常に気を張っており、あまりお腹を見せることはありませんでした。
しかし近年では飼い犬として家の中でメインで過ごしているので、飼い主が危険から守ってくれてご飯もくれるという至れり尽くせりの生活を送っています。
そうなると犬は警戒する必要がないと判断し気を抜いて隙だらけのの状態になるのです。
その結果、人間が布団の上でゴロゴロするのと同じようにお腹を見せてリラックスします。
お腹を出している以外に尻尾がダランと延びきっていたり、寝ている時にお腹を出している場合にはリラックスしている印です。
相手への愛情を見せるサイン
犬がお腹を出すという仕草は、相手のことが大好きで甘えている時に行うこともあります。
犬は古来から人間とともに生活してきた生き物で、リーダーである飼い主に撫でてもらったり、かまってもらったりするのが大好きです。
そのため飼い主さんに「かまってよ〜」「撫でて〜」と言わんばかりにお腹を見せてアピールします。
ただ、すでに述べた通り犬にとってお腹は急所なので、これは信頼している人にしか見せない仕草です。
甘えている場合には犬の耳は飼い主の方に立て、目はしっかりと開いてとろんとした眼差しで見つめ、尻尾を振っている場合もあります。
とても愛らしい姿ではありますが、犬が可愛いからといって何度も要求に応えると後々厄介です。
いつでも要求すればやってもらえると思うと、どんどんわがままになってしまいます。
また、甘えている時の犬はリラックスして甘えているので、嫌がることをしないようにしてください。
心を許してお腹を出したのに大声を出したり体を揺さぶったりなどの嫌なことをされてしまうと大きなストレスとなってしまいます。
「ごろん」を教えよう!覚えさせ方・教え方
犬の服従サインである「ごろん」を覚えさせる場合には、いくつかのステップがあるので、一つ一つ段階を踏んでトレーニングしていきましょう。
まずは「伏せ」をマスターさせてからがオススメ
「ごろん」を教える際には、犬が立っている状態ではできないので、一旦伏せの状態にさせてから行いましょう。
伏せをさせた後はそのまま横にゴロンと回る事を教えてあげるだけでOKなので、伏せを覚えているかどうかでしつけやすさは大きく変わるのです。
伏せを覚えさせる際には、犬が大好きなおやつを用意して行いましょう。
まずお座りをさせてから、鼻先に手で持ったおやつを近づてください。犬の興味がおやつに向いたら、そのままおやつを持った手を斜め下に動かして地面に近づけます。
そうするとおやつを追って犬は鼻先を地面に近づけるので、立っている姿勢を保ちにくく、自然と伏せをするはずです。
伏せをしたらその瞬間に「フセ!」といって、おやつをあげましょう。これを何回か繰り返すことで、犬は「伏せ」のコマンドを覚えることができるでしょう。
わき腹をなでてあげましょう
犬が「伏せ」を習得したら、次はいよいよ「ごろん」のステップに進みます。
犬に伏せをさせた状態でわき腹の部分を指先でくすぐってください。
そうすると犬は気持ちよくてたまらずごろんと横になってお腹を出します。
お腹を出した瞬間に「ゴロン」とコマンドを出し、おやつをあげて褒めてあげてください。
また、別のやり方もあります。
伏せをさせた状態で鼻先におやつを持って近づけ、犬が興味を示したら背中の方に動かしてください。
そうすると犬がおやつを追って背中を見るように首を回し、体勢が辛くなってごろんと寝転びます。
その瞬間に「ゴロン」と言っておやつをあげ、褒めてあげればOKです。おやつを持っているのとは反対側の手で犬の体を転がすサポートをしてあげるとスムーズです。
ごろんごろんと転がったらすぐに「ごろん」と発しましょう
犬にコマンドを覚えさせるためには、犬がその行動をした瞬間に声をかけることが大切です。
タイミングがずれてしまうと犬はなんで褒められたのかがわからず、何をしたらいいのかが理解できないのでトレーニングも難航してしまいます。
お腹をくすぐる方法でもおやつを移動させる方法でもいいのですが、大切なのはコマンドを出すタイミングです。
犬が寝転んで背中が床についた瞬間に「ごろん」と言って素早くおやつを与えるようにしましょう。
おやつを与えてからだに「ごろん」を染みこませましょう
トレーニングをする上で大切なのは、完璧に覚えるまでなんども繰り返すということです。
1回や2回成功した程度でやめてしまうときちんと定着させられない場合があるので、できる時もあればできない時もあると言った中途半端な状態になってしまいます。
犬の意欲を掻き立てて集中力を高めるためにフードやおやつは効果的なので、積極的に使っていくといいでしょう。
「こうすればおやつがもらえる」と犬に思わせることができれば、トレーニングもスムーズにできます。
また、覚えるスピードはわんちゃんによっても異なるので、2〜3回ですぐに覚える子もいれば1週間くらいかかることもいることを理解しておいてください。
愛犬がなかなか覚えなくても焦らず、正しいやり方を心がけて根気よく教えていきましょう。
「ごろん」を覚えさせることは健康管理という意味でも大切です
ごろんはただ単に愛犬に覚えさせるかわいらしい芸というだけのものではありません。
ごろんを覚えさせるとわんちゃんの体調管理やしつけの面でも役立つので、とても重要なものなのです。
お腹周りの異変を見つけるためにも有効な芸です
ごろんをさせると犬はお腹を丸出しにするので、その時に体調や健康面の状態をうかがい知ることができます。
犬は野生時代の本能として、痛みや不調を隠したがります。体調がすぐれないことを知られると、敵に狙われる可能性が高まるからです。
もちろん現在は家の中で飼われているわけですから、そのような心配はないわけですが、それでも本能として残ってしまっています。
そのため不調があっても飼い主には悟られないようにと隠してしまうのです。
普段は犬も四速歩行なのでお腹をチェックすることができないので、「ごろん」を覚えさせて仰向けにするしつけをしておく必要があります。
お腹周りで分かる病気やトラブルはこんなにも
「お腹を見ただけで体調を探ることはできるの?」なんて思うこともあるかもしれませんが、お腹の状態は意外にも多くの病気の兆候を知ることができる大切なポイントです。
例えばノミやダニがつくことによって皮膚が刺激されると、皮膚炎を起こして赤く腫れ上がることがあります。
また、ノミが寄生するとしきりにお腹を掻くようになるので、引っかき傷や出血を起こす可能性もあるのです。
また、アレルギー性皮膚炎によってもトラブルが起こることがあるので気をつけなければなりません。
さらに皮膚炎だけでなく、肝硬変や肝臓がん、腹膜炎やうっ血性心不全、寄生虫の感染が起こると腹水によってお腹が膨らんでしまうこともあるのです。
わんちゃんのためにも「ごろん」は大切なしつけの一つです
犬の健康状態を知るために覚えさせておいたほうがいい「ごろん」ですが、これはわんちゃんと飼い主の間に良い関係を築くためにも重要なものです。
お腹を見せることで犬は相手に服従の意思表示をすることができます。
コマンドを出した時にしっかりごろんができるようにしつけておけば、適切な主従関係を保つことができるでしょう。
犬社会は縦社会なので、一度犬が自分を優位だと認識してしまったらわがままになったりいうことを聞かなくなったりしてしまいます。
かわいいからといって甘やかさず、しっかりと躾をしてください。
まとめ
今回は、犬に教える「ごろ〜ん」の役割や意味について紹介してきました。
愛犬ががお腹を見せて寝そべっている姿はとても愛らしいものですし、犬の健康状態を知る上でも使える大切なコマンドです。
「ごろん」は覚えさせ方も難しいものではないので、犬が「伏せ」を覚えたら次のステップとしてぜひ教えてあげましょう。
おやつやフードを使うことでよりスムーズに覚えさせることができるので効果的です。
ごろんができるようになると飼い主との間に主従関係も作りやすく、犬が問題行動を起こさないようなしつけもしやすくなるでしょう。
最初はいう事を聞いてくれない子も根気よく続けていれば次第に覚えるなので、諦めずに何度も繰り返しトレーニングを行いましょう。